日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-03] 高校生によるポスター発表

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地質・地球生物学講座岩石鉱物学研究室)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O03-P30] 下諏訪温泉における毒沢鉱泉の泉質についての研究

*柳澤 良亮1、*桃井 義和1、*釜田 陽光1、*上條 琢巳1 (1.長野県諏訪清陵高等学校)

キーワード:温泉、成分分析、火山ガス

研究動機・目的
私たちの地元にある下諏訪温泉を入浴以外の目的で利用することができないかと調べていたところ,他の温泉に比べ,下諏訪温泉の毒沢鉱泉の泉質が特異的であった。この要因について,私たちは,毒沢鉱泉と他の下諏訪温泉では,水の起源が異なるという仮説を立てた。 
本研究では,毒沢鉱泉と他の下諏訪温泉が同じ地区にあるのにも関わらず泉質が異なる要因を明らかにすることを目的とした。

2.水質・地質概要

下諏訪温泉・毒沢鉱泉は,長野県下諏訪町に位置している温泉・鉱泉である。毒沢鉱泉だけ強酸性(pH2.6)であり,鉄(Ⅱ)イオンも多い(117.5ppm),下諏訪温泉は同じ地区にある弱アルカリ性温泉(pH8.10~8.36)であり,鉄(Ⅱ)イオンは検出されていない。

研究地域の基礎岩盤は,花崗閃緑岩であり,糸魚川・静岡構造線,中央構造線が交わる地域で,三波川変成体,安山岩質岩,石英閃緑岩,堆積岩が分布している。150万年前に大規模な火山活動があり,現在は静かである。

3.方法

・毒沢鉱泉,下諏訪温泉付近の各地点で,水質調査で採取した試料水をパックテスト・鉄(Ⅱ)・鉄(Ⅲ)・硫酸(共立理化学研究所) pH計 (堀場製作所)を使用し調べた。

・毒沢鉱泉付近の地質が毒沢鉱泉の特異性に関係しているか探るため,地質調査を行った。

・水の起源を探るため,酸素・水素安定同位体比測定を行った。

4.結果

 水質調査から毒沢鉱泉以外で毒沢の成分と似ている地域が,毒沢鉱泉から北東300m離れている一の沢でも確認することができた。この地域は,pHが低い,熱水変質をした岩石,岩石に付着した硫黄,また,赤褐色の鉄の固形物が共通して見られ,一部の地域では,硫化水素の臭いもした。この様な地域は,毒沢鉱泉から北東に帯状に分布していることも分かった。また,下諏訪温泉側の水質・地質を調べたところpHの値は7.42~7.91値を示し,熱水変質をした岩石,硫黄を確認することができなかった。

両温泉の酸素・水素安定同位体比測定し,高温火山ガスを含んでいる箱根温泉と世界天水線と比較したところ,両温泉は,天水であり,火山ガスを含んでいることが分かった。

4.結論

以上のことから,地上では確認できなかったが,断層が地下にあることが地質図から分かった。毒沢鉱泉は,断層を通ってきた火山ガスが,地下の高温・高圧下で,天水起源の地下水に混合することで,硫酸を生成したと推察できる。この硫酸によってpHが低くなり,鉄が溶けていると考えられる。

5.今後の課題
下諏訪温泉は,毒沢鉱泉と同様に火山ガスを含んでいるのに弱アルカリ性を示す要因をかつての造山運動により閉じ込められた化石海水,付加体に含まれる石灰岩のカルシウムイオンなどのアルカリ金属・アルカリ土類金属が関係していると仮説を立て,調査中である。