日本地球惑星科学連合2019年大会

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[O-03] 高校生によるポスター発表

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地質・地球生物学講座岩石鉱物学研究室)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O03-P67] 北へ移動した環流の謎を解き明かせ!

*辻 雅基1、熊谷 道夫2 (1.滋賀県立膳所高等学校、2.認定NPO法人びわ湖トラスト)

キーワード:琵琶湖、環流、エクマン輸送

この地球には海があり、海には海流という流れが存在する。では、湖には海流のような流れが存在するのかという疑問を感じたため、日本で最大の湖である琵琶湖で調査を行った。調査は2個の漂流ブイにGPSトラッカーを取り付け、それらを漂流させることで行った。また、同時期に水質計を用いて水温やクロロフィルa、溶存酸素濃度なども測定したので、環流との関連についても考察を行った。

琵琶湖には渦巻き流れが存在しており、一般的に環流と呼ばれている。環流とは圧力勾配と地球の自転によって発生する地衡流のことである。この環流については1925年に神戸気象台の須田氏らによって初めて確認されたのち、今日まで数多くの研究者によって調査が行われてきた。さらに、季節によって環流の向きが変化することも明らかにされた。

調査に用いた漂流ブイは大きく分けて3つから構成されている。上から浮き、抵抗板、重りである。抵抗板(60㎝×120㎝の塩ビ板を交差させた)は水面から6mの深さになるように設置し、常に漂流ブイの真下にくるように約20㎏の重りを取り付けた。漂流ブイの位置を記録するために取り付けたGPSトラッカーとバッテリーは浮きの上部に取り付けた。なお、GPSトラッカーの位置情報を知るために「EZFinder」というサイトを利用した。

漂流ブイは2018年8月12日から16日までの4日間漂流させ、環流を観測した。漂流開始位置は過去データをもとに、北緯35.32度、東経136.16度付近、安曇川河口より約7.7㎞の地点とした。また、2つの漂流ブイが接触するのを避けるために約100m間隔をあけて投入した。

2つの漂流ブイは投入地点をほぼ中心とする円状に約2周流れ、その後、大きな円を描きながら北上した。2つの漂流ブイが北上したのは8月15日であった。琵琶湖では8月15日未明から平均風速4~5mの東風が吹き続けていた。そのため私たちは漂流ブイが北上したのは、約24時間継続した東風によってエクマン吹送流が発生したためであると仮説を立てた。

エクマン吹送流とは風の応力によって起こされる流れのことで風向に対して表層流が北半球では右へ右への流れのことである。この流れによる正味の輸送をエクマン輸送といい、これは風向に対して直角右方向である。つまり、調査当時、東風が約24時間吹き続けていたため表層流は90度右の北へ動き、このことにより、環流は北へ移動したと考えた。

GPSトラッカーのデータより、北へ移動したのは8月15日の7時頃から同日22時30分頃であると考えられ、その間に約3.3㎞北上した。このことより、平均移動速度は0.06m/sであると考えられる。一方、エクマン吹送流は

V=τx/ρf (N/m2)

と表すことができ、ρは水の密度(1000kg/m3)、f=2Ωsinφである。φは北緯35.35度であるので、f= 2sin(35.35×3.1415/180)/24/3600=0.84×10-4 となる。これで北向きのエクマン輸送が求められる。なお、今回の事象とエクマン輸送との因果関係については現在検証中である。

また、8月16日に行った水質調査により、水温の分布から環流の水中での運動を考察した。環流の中心付近から外縁に向かうにつれて水温躍層が深くなっていった。この水温躍層の変化により圧力勾配が生じ、地球の自転によるコリオリ力との釣り合いで環流が形成されていることがわかった。