日本地球惑星科学連合2019年大会

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[O-08] ジオパークで地球活動をイメージする -ジオ多様性の大切さを知ろう-

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、市橋 弥生(佐渡ジオパーク推進協議会)、小原 北士(Mine秋吉台ジオパーク推進協議会)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)

[O08-P33] 地域住民、行政関係者等と地域を巻き込んで作成した島原半島ユネスコ世界ジオパークの新基本理念

*森本 拓1大野 希一1 (1.島原半島ジオパーク協議会事務局)

キーワード:ユネスコ、新基本理念、持続可能な発展、KJ法、プロジェクトチーム、地域住民

1.島原半島ジオパークの基本理念の改定に関わる背景

ジオパークの基本理念は、地域の未来に対する将来像を住民、行政、研究者等の多様なステークホルダー内で共有し、その将来像に対する認識をステークホルダー間で統一する上で必要不可欠なものである。またジオパークは地域の持続可能な発展を通じて地域資源を保護・保全することとした活動であるゆえ、その基本理念は地域住民にとってわかりやすく、賛同できるようなものであるべきである。

当時の島原半島ジオパーク推進連絡協議会は、2010年にジオパーク関係者の主導のもとで基本理念を策定した。しかし、ジオパークプログラムが2015年にユネスコの正式事業となって以降、ジオパークプログラムがユネスコの理念の実現に貢献する必要性が出てきた。そのため既存の基本理念は、現況のユネスコ世界ジオパークの理念とズレが生じてきた。

 そこで、島原半島ジオパーク協議会は、2018年11月に地域住民や行政関係者等を通じて、ユネスコ世界ジオパークの理念の達成に貢献する島原半島ユネスコ世界ジオパークの新基本理念を策定した。今回は、どのようにこの新基本理念を作成し、それをどのように公表してきたかというプロセスを発表する。



2.新基本理念を考えるための方法とワークショップの流れ

新基本理念の作成には、普段からジオパークの業務に携わる事務局員に加え、様々な立場の人の意見を取り入れるため、環境省、長崎県、島原半島3市(島原市、雲仙市、南島原市)の行政関係者で議論されるプロジェクトチームを立ち上げ、既存の基本理念の問題点や地域の未来について議論を行った。なおこの議論には、ジオパーク認定当初の専門員は参加せず、チームメンバーによる主体的な新しい発想のもとで議論が進められた。全4回実施されたプロジェクト会議では「今後の島原半島をどうするか」をテーマに、KJ法を用いて各々の意見を洗い出し、そこで出された類似した意見をグループ化した。その上で新基本理念に含めるべき言葉を取捨選択し、基本理念の素案をつくっていた。

第1回プロジェクト会議では、「地域の未来像」をテーマに意見の洗い出しを行った。第2回プロジェクト会議では、これまで出た意見の深掘りを行い、それをもとに意見を9つにグループ化した。第3回プロジェクト会議では、今後のジオパークの基本・行動計画を照らし合わせるために、さらに4つのグループに意見を集約した。第4回プロジェクト会議では、これまでの意見から新基本理念に使用する言葉「笑顔」、「誇り」、「幸せ」を抽出、それらをより持続可能に実現するための言葉として「もっと」や「ずっと」というキーワードを加え、新基本理念『島原半島の「笑顔」「誇り」「幸せ」をもっと、そして、ずっと』の素案を作成した。



3.地域住民に発信した新基本理念

島原半島の未来を考えるために、昨年11月に開催した日本ジオパーク認定10周年記念シンポジウムでは、約230人の高校生を含む幅広い年代の人が、これまでのジオパーク活動の振り返りと島原半島の未来について対話を行った。シンポジウムの参加者から出てきた言葉は、プロジェクトチームで考えた「笑顔」「誇り」「幸せ」等と共通する意見が多くあり、素案として作成した新基本理念は、結果として地域住民の意見を反映させるものになった。新基本理念の素案をシンポジウムの大会宣言とすることで、正式に島原半島ユネスコ世界ジオパークの新基本理念として決定した。



4.新基本理念を実現するための今後の展望

島原半島ジオパーク協議会の新基本理念『島原半島の「笑顔」「誇り」「幸せ」をもっと、そして、ずっと』は、地域の持続可能な発展を念頭においた地域住民が願う地域の未来に対する想いをかたちにした言葉である。地域住民、行政関係者等と一緒になって作成した新基本理念を、今後どのように実現していき、そして様々な人をどのようにジオパーク活動に巻き込むことができるかが課題である。

今後はそれを実現するための基本計画・行動計画を策定し、持続可能な地域作りを通じて地域資源の保護・保全を行なうジオパーク活動の担い手を増やしていきたい。