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[SCG55-01] 北勢観測点の地下水圧を用いた短期的SSEの断層モデルの推定
キーワード:地下水、歪感度、密閉井戸、スロースリップイベント
南海トラフのプレート境界で発生する短期的SSEの推定において、伊勢湾周辺の愛知県西部から三重県北部の地域には高感度な地殻変動・地下水の観測点がないことが課題の一つである。この地域に東海層群等の未固結な堆積層が厚く堆積していることがその原因と一つと思われる。地下水位の地殻変動への応答の改善を目的に、2016年5月に三重県北部に位置する北勢観測点の観測井戸(内管)をパッカーにて密閉した。観測の対象とした帯水層の透水係数が小さいため、密閉前の地下水位は地殻歪変動への応答が悪かった。密閉後は、地下水圧を測定しているが、それに潮汐変動が明確に現れるようになり、地下水圧の地殻変動への応答が改善されたことが確かめられた。密閉後の地下水圧の地殻歪応答は密閉前の約10倍に改善した。地下水圧データから潮汐成分・気圧応答・降雨応答を除去することで、2016年7月、2017年11月および2018年4月に地下水圧変化にて短期的SSEは検出された。そして、歪・傾斜・地下水圧データを用いて、短期的SSEのすべりが伊勢湾北部まで広がったと推定された。深部低周波微動が活発ではない伊勢湾北部において、短期的SSEが繰り返し発生していることを示した。歪計や傾斜計での観測に向かない軟弱な堆積層では、水位(水圧)の測定が地殻変動観測の有力な手段であることを示した。