日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-04] 地球惑星科学における高速過程を捉える

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 103 (1F)

コンビーナ:芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)、丹下 慶範(高輝度光科学研究センター)、座長:芳野 極(岡山大学)、河野 義生(愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター)、丹下 慶範

16:30 〜 16:45

[U04-11] 放射光X線を用いた高速度計測

★招待講演

*上杉 健太朗1 (1.公益財団法人高輝度光科学研究センター)

キーワード:放射光X線、高速度計測、X線イメージング

X線は物質に対する透過力が高く、物質の内部情報を得るためのプローブとして適している。たとえば単純レントゲン像に相当する透過X線強度分布により物質内部の状態観察が可能であるが、さらにそのエネルギースペクトルからは物質による吸収・蛍光スペクトルなどが分かる。また回折像からは、物質の鉱物相を同定することが可能である。

放射光X線は基本的には連続スペクトルを有している。これにより、物質の種類や必要とする情報に応じてX線照射エネルギー(波長)を調整し最適化することが可能となる。大型放射光施設SPring-8などの第三世代以降の放射光施設ではX線の光束密度(photons / sec / mm2)あるいは輝度(photons / sec / mm2 / (mrad)2 / 0.1%b.w.)を高めるため、アンジュレーターなどの挿入光源が導入されている。アンジュレーターからの放射光X線とラボ用光源からのX線の輝度を比較すると、最大で109倍程度の開きがある。つまりアンジュレーターからはラボ用線源とは比較にならないほどのX線強度(正確には光束密度)が得られ、圧倒的な(時間・空間・エネルギー)分解能を実現できる。

たとえばX線画像計測(X線イメージングとも言う)では、1kHz程度のフレームレートでの観察は十分行えるし、小角散乱計測でも数kHzで昆虫が羽ばたく際の筋肉の運動がその場観察できる。湾曲型の結晶分光器を使うDispersive XAFSという手法ではミリ秒程度でXAFS信号の取得が可能である。これらは様々な非平衡あるいは動的現象を捉えるのに有効である。

講演では放射光X線を利用して実施された高速度計測の事例をいくつか示し、今後どのような地球科学的現象に適用できるか、参加者と議論したい。