日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-06] 100周年を迎えるIUGGへの日本の貢献

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (2F)

コンビーナ:中田 節也(研究開発法人 防災科学技術研究所)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、東 久美子(国立極地研究所)、座長:東 久美子(国立極地研究所)、中田 節也(防災科研)

10:15 〜 10:30

[U06-05] IAGへの日本の貢献

*福田 洋一1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室)

キーワード:国際測地学協会、GGOS

IAG (International Association of Geodesy)の歴史は、19世紀中頃の中央ヨーロッパでの孤長測量に関連した国際プロジェクトにまで遡り、1864年にはベルリンでその初の総会が開催されている。IUGG (International Union of Geodesy and Geophysics)の 第1回総会は1922年にローマで開催されたが、IAGは、当初からIUGGを構成していた5協会の1つであり、IUGGの名前が示すように、その中でも特別な位置付にあったと言える。

測地学の歴史は紀元前のエラトステネスによる地球の大きさの測定にまで遡るが、その後もそれぞれの時代の要請に応じて発展してきた。さまざまな科学技術が高度に発展した現代にあって、測地学の目的は「測地学の三本柱」と呼ばれる「地球の形状、重力場、地球回転」および、これらの時間的変化を決めることとされているが、少し言葉を変えれば、「測地基準系、地球重力場、地球回転パラメータ」を維持・提供することである。IUGGの中でのIAGの役割、あるいは測地学の現代社会へのもっとも重要な貢献も、突詰めればここにあると言えるであろう。現在、IAGが最も注力していることの一つであるGGOS (Global Geodetic Observing System) は、その傘下にIAGのさまざまサービスを束ねることで、これら最も基本的な情報の提供と、それに必要なインフラストラクチャを持続的に発展させることを目指しているが、これは上記の目的を達成する具体的な手段といえるであろう。

具体的な例として、全球的な測地基準系を与えるITRF (International Terrestrial Reference Frames) は、宇宙測地技術を基に、IAGのサービスの一つであるIERS (International Earth Rotation and Reference Systems Service)が維持・供給しているが、ITRFは地殻変動や海面上昇など地球科学的な研究はもちろん、すべての位置情報の基準として社会生活にとっても欠かせないものとなっている。また、地球重力場の情報は、IGFS (International Gravity Field Service) により重力データやそのメタデータとして提供され、IGETS(International Geodynamics and Earth Tide Service)では、高精度な重力の時系列データが、ICGEM (International Centre for Global Earth Models)では、さまざまな地球重力場モデルに加え、GRACEによる地球重力場の時系列モデルも統一的に提供している。重力の時系列データによる質量移動の情報は、グローバルな水循環や氷床変動などの研究に欠かせなくなっていることは周知のとおりであり、地球環境研究にも大きく貢献している。さらに地球回転パラメータの一つであるLOD (Length of Day) は、時計(UTC)の管理・維持に欠かせないものであると同時に、地球科学的には、地球表層流体と固体地球の相互作用や地球深部流体核のダイナミクスと密接に関連した大変重要な情報を与えてくれる。

このように現代測地学は現代社会のインフラとしての重要な役割を果たしており、他の地球惑星科学の広い分野と密接な関係をもっているが、そのことはIUGGのジョイント・セッションの多くにIAGが関わっていることにも伺われる。本講演では、以上のような観点から、現在のIAGの組織構造やその役割について紹介し、歴史的な部分も含め我が国のIAGへの貢献について述べる。