日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] 口頭発表

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[U-08] 日本地球惑星科学連合の将来に向けた大会参加者からの意見と提言

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 101 (1F)

コンビーナ:浜野 洋三(神戸大学海洋底探査センター)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、隅田 育郎(金沢大学 理工研究域 地球社会基盤学系)、座長:和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、隅田 育郎

16:18 〜 16:30

[U08-12] 地球惑星科学総合所属1代議員からの意見:国内向け活動・事業強化を

*熊谷 英憲1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:地球惑星科学総合、地球科学コミュニティの多様化、国内向けの活動

地球惑星科学総合選出の代議員として、また、今後連合を個人としての学会活動の中心に位置づけていきたい立場から、連合が目指すべき1つの方向性として国内の地球科学コミュニティの活性化と多様化を通じた基盤の強化を図ること、そのための国内向けの活動の強化を提案する。そのために議論/考慮すべき点として以下を挙げる:
1: 過度な国際化を志向しない
2: 地方在住者や学協会に基盤を持たない会員が参加しやすい仕組みづくり
3: 参加学協会個々で抱えている困難/課題に対する支援
4: 連合体としての機能強化。
1については、AGUとの連携が真に連合の活動強化となっているかを立ち止まって考えるべきであるとの認識からである。母国語での高度な議論が可能であるというメリットも今一度認識する必要がある。プロフェッショナル団体の会合としてはいささかの疑問がある近年のAGU秋季大会が連携の志向先として適切かどうか、ということでもある。
2については1とも関連し、大会参加費の相次ぐ値上げの打開、それと表裏一体の参加登録料に依存した財政体質の改善を指摘したい。会員としては個々の学協会に支出する年会費さえ抑えたいのが人情である。学協会の背景を持たない代議員の活用が図られることとも関連しよう。
3については学協会それぞれに課題が異なっているやに思われ、演者の限られた経験では概括的な議論は難しいと感じるものの、例えば、学会誌への査読付論文の確保が難しい団体は必ずしも小規模学協会のみとは限られないであろうことは考慮すべき要素の1つであるように思える。会員数減少はより普遍的な課題であるだろう。異なる視点ではあるが、日本学術会議により2019年2月14日に公表された提言「学協会に係る法人制度ー運用の見直し、改善等について」でも小規模学協会が活動しやすい条件整備が重要との指摘がなされている(主に法人運営に関する法整備の視点ではあるが)。
4についても上述の提言にて、研究者コミュニティが社会の多様な要請に対応する際に重要な役割を果たしているとして、学協会連携組織体の顕著な活動に着目しつつ、事業運営の困難を打開する提案を行っている。これを踏まえ、「学術会議協力学術研究団体」としての要件に現在は個々の学協会が「論文等を掲載する機関誌を年1回継続して発行していること」が掲げられているところ、この緩和への期待に基づき、連合に加わっている学協会の機関誌発行を受託しいずれ統合して地球科学の基幹誌を発行していくことを提案したい。PEPSは高いインパクトを国際的に獲得することを志向しているが、これを補うものが必要ではないか、ということである。例えば、AAASによるScience誌の発行に倣うような地球科学総合誌が発行され、定着、成長していくならば、PEPSないしそのジャーナルが相応の影響力を持つこともあり得るかも知れない。であれば、N誌やS誌のような欧米の権威を借りての業績評価の風潮も打開されるだろう。