JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS07] 大気化学

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

[AAS07-P27] α-ピネン由来二次有機エアロゾル中に検出されるダイマーの生成過程

*佐藤 圭1Ramasamy Sathiyamurthi1猪俣 敏1江波 進一1森野 悠1 (1.国立研究開発法人国立環境研究所)

キーワード:生物起源揮発性有機化合物、二次有機エアロゾル、化学反応メカニズム、低揮発性有機化合物、スモッグチャンバー

大気エアロゾル粒子中のダイマーなど低揮発性有機化合物の生成は粒子の揮発性や粘性への影響により大気中の有機エアロゾル粒子の発生レベルに影響をおよぼす。森林エアロゾル中に検出されるダイマー1)の生成機構を明らかにするために、α-ピネンを用いたチャンバー実験により生成した二次有機エアロゾル(SOA)粒子のフィルター抽出物を液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)により分析した。VOCの酸化剤の種類、初期VOC濃度、酸性粒子添加濃度、チャンバー温度など生成条件の関数として分子量344, 358および368のダイマーについてダイマー/SOA比の変化を調べた。実験には国立環境研究所にある6 m3大気化学チャンバーおよび0.7 m3の温度可変テフロンチャンバーを用いた。O3とα-ピネンとの反応で測定されたダイマー/SOA比は、OHラジカルやNO3ラジカルの反応よりも高かった。酸触媒不均一反応によりダイマーを生成するカルボニル化合物や開合反応によりダイマーを生成する有機過酸化ラジカルはOHラジカルやNO3ラジカルの反応によっても生成するはずなのに、OHラジカルやNO3ラジカルの反応でダイマーが生成しにくかった。さらに、サンプル溶液中における分子量344および358のダイマー濃度と対応するモノマー濃度の積との間には相関が見られた。とくに分子量358のダイマーはカラムにより想定されるモノマーのピン酸およびテルペニル酸とは分離して検出されており、分子量358のダイマーの信号は装置のアーティファクトではなく粒子あるいは溶液中で安定に存在すると考えられる。分子量358のダイマーはO3反応で生成するCriegee中間体の反応によりダイマーが生成する可能性が強いが、O3反応およびその後続反応によりジカルボン酸など半揮発性のモノマーが生成しその後モノマー同士の水素結合により2)生成する可能性も排除できない。本研究は環境再生保全機構の環境研究総合推進費5-1801および国立環境研究所の公募研究Aの支援により行われた。

参考文献
1) 佐藤ほか、冷温帯林における通年観測で採取された植物由来二次有機エアロゾル中に存在する分子マーカーのLC/MS分析、地球惑星科学連合 2019年大会、AASO4-22、千葉 (2019).
2) DePalma et al., Thermodynamics of oligomer formation: implications for secondary organic aerosol formation and reactivity, Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 6935-6944 (2013).