[G02-02] 令和元年台風19号で浸水した多摩川右岸地域(神奈川県川崎市高津区・多摩区)における,水災害に特化した環境防災教育プログラムの開発
キーワード:環境防災教育プログラム、水災害、行政-学校間連携、フィールドワーク、ハザードマップ、DIG ( Disaster(災害) Imagination(想像力) Game(ゲーム) )訓練
1 はじめに
神奈川県立向の岡工業高校(川崎市多摩区)は多摩川右岸すぐ南の多摩川低地(沖積層),洪水浸水想定区域の中にあり,高津区との区境に位置する。約500mほど南に多摩丘陵・下末吉段丘があり,これらに沿って土砂災害危険区域,急斜面地崩壊危険区域が多く分布する。丘陵・段丘の手前に最寄り駅であるJR南武線 久地駅がある。
付近では,1971(昭和46)年に「川崎ローム斜面崩壊実験事故」,1974(昭和49)年に「多摩川水害」が起きた。令和元年台風19号では,高校の一部及び周辺が浸水し,高校から約1kmほど東(高津区)で死者が出た。
向の岡工業高校定時制総合学科の生徒を対象に,本稿で紹介する「水災害に特化した環境防災教育」実践を行うことで,市内の小中学校などに提供する「気象災害と気候変動適応策の地域学習プログラム」の開発に取り組んだ。
2 2017(平成29)年 フィールドワーク実践
理数「環境防災フィールドワークB(学校設定科目・自由選択科目(2~4年次 6名)・夏季集中科目・1単位)」では「水利用と環境防災」をテーマとし,次のとおり授業を行った。事前学習以外は,日中に実施した。
(1)7月18日(火) 事前学習(向の岡工業高校)
大雨災害とそのメカニズム,川崎市の気候変動・大雨への適応策に向けた基本的な方針などについての学習を行った。
(2)20日(木)・21日(金) フィールドワーク(川崎市高津区)
川崎市発行の「高津区流域地形地図(たかつ凸凹マップ)」「防災マップ」「洪水ハザードマップ」「土砂災害ハザードマップ」を用いて,過去の浸水場所,土砂災害の可能性がある場所を巡り,地形の成因と土木工事と,水の環境防災との関係について考えていった。主に20日は多摩川水系,21日は鶴見川水系を巡った。
(3)22日(土) 港湾空港技術研究所(横須賀市)
一般公開に参加し,水の環境防災に関する最先端の科学技術を学び,考察をした。
(4)24日(月) 東京消防庁 本所都民防災教育センター 本所防災館(東京都墨田区)
主に水災害に焦点を当て,体験を通し防災について学んだ後,学習内容を深めるために海抜ゼロメートル地帯を歩いた。
(5)25日(火) まとめ(向の岡工業高校)
4日間学んだ成果を受講生全員でまとめ,成果は,文化祭で展示発表を行った。
多摩川水系で,生徒たちに印象的な場所ほど令和元年台風19号での被害が大きかった。最も印象深かった場所で死者が出た。
3 2018(平成30)年 全校生徒対象のDIG実践
全校生徒(89名)を対象とし,9月25日(火)に「避難訓練」,「災害下校訓練」と合わせ,水災害に特化した「DIG ( Disaster(災害) Imagination(想像力) Game(ゲーム) )訓練」を会議室にて90分間で実施した。各班構成は,年次混合で下校方面が同じ5~6人とした。
はじめに,最近の全国の水災害,高校付近で過去に起きた水災害,それらのメカニズムについて,解説を行った。
1/10,000地形図「溝口」を本校の近くを通るJR南武線と私鉄との乗換駅である武蔵溝ノ口駅,登戸駅を含む3km×4kmの範囲をA0版に拡大したものに,2(2)で使用した4種類の地図から,各班でインフラや危険区域など必要な情報を書き込み,防災地図を作製した。
各班で作製した防災地図から,「洪水を想定し,高校周辺地域の防災的長所と短所」「洪水の可能性により,高校付近の公共交通が運休となった場合の帰宅ルート」を考察し,全校生徒で各班の意見を共有した。
「土砂災害危険区域と急斜面地崩壊危険区域を通らずに,多摩川から離れた下末吉段丘上の広域避難所である”緑ヶ丘霊園”へまずは最短で避難をし,段丘を越えて,バス通りに出るルート」を見出した生徒がおり,全校生徒で共有することができた。
神奈川県立向の岡工業高校(川崎市多摩区)は多摩川右岸すぐ南の多摩川低地(沖積層),洪水浸水想定区域の中にあり,高津区との区境に位置する。約500mほど南に多摩丘陵・下末吉段丘があり,これらに沿って土砂災害危険区域,急斜面地崩壊危険区域が多く分布する。丘陵・段丘の手前に最寄り駅であるJR南武線 久地駅がある。
付近では,1971(昭和46)年に「川崎ローム斜面崩壊実験事故」,1974(昭和49)年に「多摩川水害」が起きた。令和元年台風19号では,高校の一部及び周辺が浸水し,高校から約1kmほど東(高津区)で死者が出た。
向の岡工業高校定時制総合学科の生徒を対象に,本稿で紹介する「水災害に特化した環境防災教育」実践を行うことで,市内の小中学校などに提供する「気象災害と気候変動適応策の地域学習プログラム」の開発に取り組んだ。
2 2017(平成29)年 フィールドワーク実践
理数「環境防災フィールドワークB(学校設定科目・自由選択科目(2~4年次 6名)・夏季集中科目・1単位)」では「水利用と環境防災」をテーマとし,次のとおり授業を行った。事前学習以外は,日中に実施した。
(1)7月18日(火) 事前学習(向の岡工業高校)
大雨災害とそのメカニズム,川崎市の気候変動・大雨への適応策に向けた基本的な方針などについての学習を行った。
(2)20日(木)・21日(金) フィールドワーク(川崎市高津区)
川崎市発行の「高津区流域地形地図(たかつ凸凹マップ)」「防災マップ」「洪水ハザードマップ」「土砂災害ハザードマップ」を用いて,過去の浸水場所,土砂災害の可能性がある場所を巡り,地形の成因と土木工事と,水の環境防災との関係について考えていった。主に20日は多摩川水系,21日は鶴見川水系を巡った。
(3)22日(土) 港湾空港技術研究所(横須賀市)
一般公開に参加し,水の環境防災に関する最先端の科学技術を学び,考察をした。
(4)24日(月) 東京消防庁 本所都民防災教育センター 本所防災館(東京都墨田区)
主に水災害に焦点を当て,体験を通し防災について学んだ後,学習内容を深めるために海抜ゼロメートル地帯を歩いた。
(5)25日(火) まとめ(向の岡工業高校)
4日間学んだ成果を受講生全員でまとめ,成果は,文化祭で展示発表を行った。
多摩川水系で,生徒たちに印象的な場所ほど令和元年台風19号での被害が大きかった。最も印象深かった場所で死者が出た。
3 2018(平成30)年 全校生徒対象のDIG実践
全校生徒(89名)を対象とし,9月25日(火)に「避難訓練」,「災害下校訓練」と合わせ,水災害に特化した「DIG ( Disaster(災害) Imagination(想像力) Game(ゲーム) )訓練」を会議室にて90分間で実施した。各班構成は,年次混合で下校方面が同じ5~6人とした。
はじめに,最近の全国の水災害,高校付近で過去に起きた水災害,それらのメカニズムについて,解説を行った。
1/10,000地形図「溝口」を本校の近くを通るJR南武線と私鉄との乗換駅である武蔵溝ノ口駅,登戸駅を含む3km×4kmの範囲をA0版に拡大したものに,2(2)で使用した4種類の地図から,各班でインフラや危険区域など必要な情報を書き込み,防災地図を作製した。
各班で作製した防災地図から,「洪水を想定し,高校周辺地域の防災的長所と短所」「洪水の可能性により,高校付近の公共交通が運休となった場合の帰宅ルート」を考察し,全校生徒で各班の意見を共有した。
「土砂災害危険区域と急斜面地崩壊危険区域を通らずに,多摩川から離れた下末吉段丘上の広域避難所である”緑ヶ丘霊園”へまずは最短で避難をし,段丘を越えて,バス通りに出るルート」を見出した生徒がおり,全校生徒で共有することができた。