JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

[G03-09] JAXAによる宇宙教育と「月と太陽」における授業実践例

*古賀 友輔1 (1.国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)

キーワード:宇宙教育、JAXA、月と太陽

JAXA宇宙教育センターで定義する宇宙教育とは、「好奇心」「冒険心」「匠の心」の3つの心に火をつけることを目的に宇宙という素材を活用した教育活動としている。宇宙開発の後継者育成や科学教育を主目的とせず、情報技術革新やグローバル化を背景とした”予測困難な”未来社会を切り拓く人材の育成を宇宙教育のゴールと捉えている。
この考え方は近年の教育業界の方向性とも一致しており、新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を達成する教育手法としても宇宙教育は有用であると考えている。宇宙教育センターでは宇宙を素材とした、体験や試行錯誤を通した学習、グループで協働した課題解決型の学習を取り入れ、できるだけ子どもたちが受け身にならない活動の形をとっている。
宇宙には”未知”で”予測困難”な領域が多くあるため、宇宙を素材に教育することは、”答えのない問いに挑む力”、”想像力”、”多角的な考え方”などの力を醸成することができる教育手法だと考えている。

宇宙教育センターでは上述の教育理念をもとに、学校教育関係者や社会教育関係者が宇宙教育を実践するための支援を行っている。本発表では学校教育での実践例をもとに進める。

学校教育支援活動の一つに、学校とJAXAが連携して授業を実施する「授業連携」がある。本発表では宇宙教育の教育効果について、2019年に相模原市内の小学校で行った授業連携を例に述べていく。
この小学校では、小学校6年生で学習する「月と太陽」という単元において授業連携を行った。本単元での学習では、月と太陽の性質や特徴についての”知識的”な学習へと陥りやすい。月の満ち欠けについては、月の観察や満ち欠けの実験を行う学校は多いが、実験そのものは教科書通りの内容で”知識”として学ぶための一つのツールとして捉えられていることが多い。
本事例においては、単元全体を通して学校と連携して進めた。月の満ち欠け実験については、実験方法・実験環境・必要な物など一から子どもたちに考えてもらった。単元の終末としては、「月から見た地球は満ち欠けするか?」という問いを投げかけ、それを検証するための実験、考察、結論づけまで挑戦してもらった。
このプログラムは、多角的な考え方、妥当性のある実験を実現するための匠の心を育てることを意図して実施した。
本事例を通して、子どもたちの意識・態度にどのような変化があったか、終末の授業の前後に行った学習の振り返りシートを元に分析した。