JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG30] 考古科学:地球科学と考古学

コンビーナ:下岡 順直(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)、箱崎 真隆(国立歴史民俗博物館)

[HCG30-P09] 考古地磁気学は、東南アジア考古学に対して何ができるか?

*北原 優1山形 眞理子2大野 正夫1山本 裕二3畠山 唯達4 (1.九州大学 大学院 比較社会文化研究院、2.岡山理科大学 経営学部、3.高知大学 海洋コア総合研究センター、4.岡山理科大学 情報処理センター)

キーワード:考古地磁気学、東南アジア考古学、ベトナム、サーフィン文化、チャンパ王国

東南アジア地域においては、有史以来、現代に至るまで、多種多様な民族集団・文化集団の栄枯盛衰、そして集団間の交渉の歴史が繰り広げられてきた。これらの歴史の復元については、H.ムオーやD.ドゥ・ラグレを筆頭とするヨーロッパ人考古学者による研究が19世紀半ばに開始されて以来、急速に進展しつつあるものの、未だ完成には程遠く、とくに各都市・各コミュニティ間(各遺跡群間)の関係性の詳細に関しては、不明な点が多く存在する。これらの原因のひとつに、各遺跡群の出土遺物(土器や美術品など)の相対年代値の関係性が未だ不明瞭であるということが挙げられる。出土遺物のデザインが大きく異なると、一連の組列を構築することが困難になるからである。しかしながら、考古地磁気学的データのような物理量は単なる数値であるため、文化的な差異の影響を受けにくく、広範囲における各遺跡群を繋ぐ相対編年の構築に利用できる可能性がある。
このような背景から、発表者らは今年度より、考古地磁気学的データ群を考古学・美術史分野のデータ群を組み合わせた複合的なデータセットを構築し、東南アジア地域における文化・社会構造変動の解明に応用するための基礎を作り、さらにその結果を地球科学分野に再還元することを目的とした研究を開始する予定である。そして具体的には、①ベトナム中部の前4世紀~後15世紀の2つの文化(サーフィン文化・チャンパ王国の文化)に関する歴史記述のさらなる精密化、②ベトナム南部出土の年代が未知の遺物の年代帰属、③ベトナムにおける地磁気二成分(強度・伏角)の時間変化モデルの作成の3つの課題解決に取り組む計画である。
本発表では、本計画の概要と展望について紹介するとともに、その将来的な応用可能性について考えてみたい。