JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG32] 原子力のリスクと地球科学:工学との対話

コンビーナ:寿楽 浩太(東京電機大学工学部人間科学系列)、金嶋 聰(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、鷺谷 威(名古屋大学減災連携研究センター)、末次 大輔(海洋研究開発機構 海域地震火山部門 火山・地球内部研究センター)

[HCG32-02] 葬られた津波対策をたどって

*島崎 邦彦1 (1.東京大学)

キーワード:原子力発電所、津波地震

2002年の津波地震の警告は、防災対策や原子力安全対策にほとんど用いられることなく、2011年3月11日の大津波を迎えた。1万8千有余の方々の命を奪い、さらに福島第一原子力発電所の重大事故をもたらした。日本では地震活動が活発なことから、発生頻度の低い地域で行われている地震ハザード解析を知らない人も多い。日本海構造沿いの地域で津波地震が発生するという長期評価に対し、乱暴だなという印象を受けたという発言はこのような背景から理解できる。日本で作られた、いわゆる河角マップは過去の地震活動を直接使っており、同じような地震が発生する地区を設定していない。このため大地震が比較的稀な浅発地殻内地震に対しては、逆の結果となる。発生頻度が低く、最大加速度が小さいとされた地域で、1964年新潟地震が発生したのは、未だ関係者に語り伝えられている。日本海沿いの地域を同じような地震が発生する地区と設定すれば、この点を改善できる。低周波地震が発生する日本海溝沿いを、同じような津波地震が起こる地区として設定するのには、このような背景によっている。津波地震の長期予測でもう一つ重要なのは、歴史地震学である。この分野についても知らない人が多い。この二つの方面への無理解は実に恐ろしい犠牲を生む結果となった。具体的にどのように防災関係者や原発関係者が反応し、対応したのか述べて、今後に生かしたい(「科学」岩波、2019年1月号より連載中)。