JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG34] 人間の社会活動と地球惑星科学

コンビーナ:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、伊藤 昌毅(東京大学生産技術研究所)、山本 佳世子(国立大学法人 電気通信大学)

[HCG34-P05] 防災・減災のためのソーシャルメディアマッピング

*山本 佳世子1 (1.国立大学法人 電気通信大学)

キーワード:防災・減災、ソーシャルメディアマッピング、デジタル地図、2018年西日本豪雨災害

近年では世界各地で,地震災害だけではなく,火山噴火,台風や局所的豪雨などの気象災害の発災頻度も増え,自然災害対策が最重要課題になっている.一方,近年のわが国では,様々な情報ツールからインターネットにつながることができるクラウド・コンピューティング社会が形成されるとともに,様々なものがインターネットに接続されるIoT,IoEの時代になった.以上の背景に基づき,地域知としての災害情報の利活用を図るために,本稿の著者の研究室では平常時から災害発生時における減災対策のための災害情報システムを開発し,東京都三鷹市において2014年度から運用している.さらに時空間情報システムも開発し,重要な機能の1つのソーシャルメディアマッピング機能では,位置情報付きのソーシャルメディア上の投稿情報をデジタル地図上に集約化し,災害時におけるこれらの情報の利活用の可能性を示してきた.そこで本稿では,西日本豪雨災害(2018年7月)におけるソーシャルメディアの利活用の事例を特に参照し,災害対応においてICTが重要な役割を今後担っていくために必要な事項について論じる.
災害時には状況が刻々と変化するため,状況を短文と画像,動画で示すことができるTwitterの利活用が特に目立った.Twitterとはアメリカでは2006年,日本では2008年から利用され始め,今していること,感じたこと,他の利用者へのメッセージなどを「つぶやき」の形式で投稿するスタイルのブログサービスである.大きな特徴はハッシュタグであり,Twitterで発言をグループ化して検索・表示することができる標識となる.これは「#」記号に続けて単語やフレーズを記述したものであり,同じハッシュタグを持つ発言を集めて掲示板のように一覧することが可能である.またハッシュタグを付加することで,「その発言が何についてのものか」をわかりやすく示すことも容易に可能である.
西日本豪雨に関連したツイートのハッシュタグの利用に着目すると,災害発生時から時間変化とともに,付加されるハッシュタグが異なっていたことが明らかである.ハッシュタグの特徴としては,同じことを示しているハッシュタグが複数種類生成されていたこと,ハッシュタグ付きのツイートがほぼ全てで,複数のハッシュタグ付きの場合が多かったこと,災害の状況や救助要請ハッシュタグに加えて,特定の被災自治体のハッシュタグ付きのツイートが大部分であったこと,特に甚大な被害が発生し,マスコミでもよく報道されていた岡山県倉敷市真備町は町内の特定地区のハッシュタグが付いたツイートが多かったことが示された.また救助要請情報を自発的にとりまとめる利用者が現れ,拡散を希望するハッシュタグがなくても,利用者の善意に基づく自発的なリツイートが多く見られた.
わが国のような超スマート社会では,現実空間と仮想空間が密接に関わりあって融合しているため,これ2つの空間での事象が日常的に相互に影響し合っている.そのため現実空間で災害が発生すると,仮想空間でもほぼ同時期に,マスメディア,ソーシャルメディアの両方を含む多様な情報通信手段を用いて災害関連情報の送受信が開始されている.このことが避難,救助,支援などの実際の活動につながることもあるが,情報過多,これに伴う混乱などの問題を生じさせる可能性もある.そのため,仮想空間で送受信される情報,特にソーシャルメディア上の情報を実際の救助や支援にどのように効率的かつ効果的に役立てることができるのかが課題となる.
このような課題に対応するために,ソーシャルメディアの利活用のルールを作成するだけではなく,被災地の行政や救助・支援活動をされる方々に対して,被災地外等において必要不可欠な情報を取捨選択して伝える役割が必要となりうる.このような時には,著者の研究室が開発した時空間情報システムのソーシャルメディアマッピング機能を用いると,必要不可欠な情報をデジタル地図上に効率的に集約化して伝えることができる.また本稿ではTwitterのみを対象として,災害時の利活用のルールを提案したが,他のソーシャルメディアも対象としてそれぞれの特徴を考慮したルールを提案することが必要とされる.