JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI40] 計算科学による惑星形成・進化・環境変動研究の新展開

コンビーナ:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、小河 正基(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、井田 茂(東京工業大学地球生命研究所)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

[MGI40-06] 動径基底函数を用いた球面上のセミ・ラグランジュ移流モデル

*榎本 剛1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:球面、セミ・ラグランジュ移流、動径基底函数

1. はじめに
動径基底函数(Radial Basis Functions, RBF)は,節点からの距離のみに依存する函数である。Flyer and Wright (2007)[1]は,RBFを用いて移流モデルを構築し,移流実験において節点数とともに精度が指数函数的に向上するスペクトル精度が得られることを示した。この先行研究では,最小エネルギー節点が用いられているが,反復法を用いる節点の構築は容易ではない。そこで,著者は決定論的に球面上の準一様節点を構築できる球面螺旋を用いることを提案し,一様性に優れることを示した(JpGU 2018 MGI28-04)。RBFは,格子構造を持たない節点においてデータが与えられた場合でも精度よく内挿が可能である。本研究では,セミ・ラグランジュ移流スキームの内挿手法としてRBFを用いたモデルを構築し,オイラー法と比較を行う。

2. モデル
節点には球面螺旋[2]を用い,節点数は4096点とした。オイラー移流モデルには,デカルト座標系でRBFを用いて球面上の剛体回転に対する微分演算子を用いた[1]。ガウス型のRBFを用い,形状パラメタはε=10とした。時間刻み幅は30分である。セミ・ラグランジュ移流モデルでは,デカルト座標系で上流点探索を行い[3],RBFを用いて内挿を行った。多重二重及びガウス型のRBFを用い,形状パラメタはデカルト座標系での節点間距離から決まるε≈8である。時間刻み幅は,3倍の90分とした。
極を通るように傾斜させた剛体回転でコサイン型の山を移流[4]し,一周後の初期値との差を誤差とした。

3. 結果
セミ・ラグランジュ移流モデルは,オイラー移流モデルに比べてやや精度が向上した。とくにガウス型のRBFでは,L2ノルムが半減した。オイラー移流モデルが値は小さいが全球に誤差が見られるのに対し,セミ・ラグランジュ移流モデルでは山の周りに局在化している。

4. まとめと議論
セミ・ラグランジュ移流の内挿にRBFを用いることにより,格子構造を持たない準一様節点で精度よく内挿ができた。その結果,オイラー移流モデルよりも長い時間刻み幅を用いながら同等以上の精度を得ることができた。節点配置は不変なので,内挿行列の逆行列は毎ステップ計算する必要はない。

謝辞
本研究はJSPS科研費JP19H05605の助成を受けた。

参考文献
[1] Flyer, N. and G. B. Wright, 2007: J. Comput. Phys., 226, 1059–1084.
[2] Bauer, R., 2000: J. Guid. Control. Dyn., 23, 130–137.
[3] Ritchie, H. 1987: Mon. Wea. Rev. 115, 608–619.
[4] Williamson et al., 1992: J. Comput. Phys., 102, 211–224.