[MIS08-P06] チベット高原南東部に分布する始新世後期のトラバーチンと酸素・炭素同位体比の周期的変動から示唆されるモンスーン気候の可能性
キーワード:トラバーチン、始新世後期、アジアモンスーン、雲南高原
アジアモンスーンは世界最大のモンスーンであるが、成立した年代・原因は未だわかっていない。最近では、始新世後期にモンスーン気候がアジアの一部地域においてみられたという説が提案されているが(Licht et al., 2014)、地質学的な研究はわずかであるため十分な検証は出来ておらず、特に低緯度域における古気候記録は不足している。本研究では、まず、チベット高原南東部に位置する雲南高原剣川盆地において、始新世後期に堆積した石灰岩の堆積相の観察と酸素・炭素同位体比分析を行った。堆積相を観察した結果、6つの岩相に区分されることが分かり、規則的な縞状組織や石灰化された水草が見出され、それらの特徴からトラバーチンであることが示唆された。また、高い炭素同位体比を低い酸素同位体比もトラバーチンであることを支持する。地下起源のCO2を含む水から大きな比率で13Cに乏しいCO2が高い比率で脱ガスし、炭素同位体比が高くなったと考えられる。縞状トラバーチンの同位体組成を高解像度で分析した結果、縞と連動して炭素・酸素同位体比は変動し、縞が年輪であることがわかった。このトラバーチンの同位体パターンは始新世後期の気候が現在のモンスーン気候と同様に夏季に湿潤で冬季に乾燥していたことを示す。