JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] 古気候・古海洋変動

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、Benoit Thibodeau(University of Hong Kong)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、長谷川 精(高知大学理工学部)

[MIS08-P20] 石筍の同位体記録から読み取る最終氷期の日本海表層水の淡水化

*雨川 翔太1柏木 健司2堀 真子3曽根 知美4加藤 大和1奥村 知世5余 采倫6沈 川洲6,7,8狩野 彰宏1 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.富山大学理学部生物圏環境学科、3.大阪教育大学自然科学コース、4.マリンワークジャパン、5.高知大学海洋コア総合研究センター、6.国立台湾大学地球科学専攻高精度質量分析環境変動研究室、7.国立台湾大学地球環境研究センター、8.国立台湾大学フューチャーアース研究センター)

キーワード:石筍、冬季アジアモンスーン、最終氷期、日本海

一般に東アジアにおける石筍の酸素同位体比(δ18O)記録は暖かく湿潤な間氷期に低い値を、寒く乾燥した氷期に高い値をとることが知られている。本研究で扱った新潟県糸魚川市の洞窟から採取された石筍は最終氷期の記録を保持しており、同じ洞窟で採取された完新世の石筍記録と比較すると、通常とは異なり、最終氷期においてより低い値を示している。先行研究ではこの洞窟付近の気候は、日本海からの水蒸気を取り込んだ冬季モンスーンによって支配されていることが示されている (Sone et al., 2013)。そこで、氷期においてはより多くの水蒸気が、完新世よりも強化された冬季モンスーンによってもたらされたと解釈してしまうと、海水凖低下によって対馬暖流の流入が制限されたとする有孔虫記録と矛盾する。さらに、雨水の同位体記録から計算すると量的効果による同位体変化では説明しきれないことが示唆された。したがって、石筍のδ18O記録が低い値をとる原因として、水蒸気ソースである海水の同位体が異常に軽くなっていたことが考えられる。これは海水凖低下によって孤立した日本海に淡水が流入し、成層化に伴って表層の塩分とδ18Oが低下したとする有孔虫記録と整合的であり、本研究によって初めて陸域記録からこれが支持された。