JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] Conservation of geoparks, natural geosites, and cultural heritage: weathering and damage assessment

コンビーナ:Luigi Germinario(Saitama University)、Celine Schneider(University of Reims-Champagne-Ardenne)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、Miguel Gomez-Heras(Universidad Autonoma de Madrid)、Patricia Vazquez(GEGENAA EA 3795 University of Reims Champagne-Ardenne)、Magdalini Theodoridou(Cardiff University)、宋 苑瑞(早稲田大学)

[MIS19-P01] 磁気共鳴表面スキャナーの開発:文化遺産の非破壊・原位置含水率計測にむけて

*中島 善人1 (1.国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

キーワード:非破壊検査、核磁気共鳴、多孔質媒体

文化遺産のメンテナンス・調査では、対象を傷つけぬような非破壊検査が望ましい。屋外の壁や路面など風雨にさらされる文化遺産の内部にしみ込んだ水の存在は、壁の劣化促進や凍結による亀裂進展のリスクをもたらすので、壁内部の体積含水率の原位置・非破壊計測はニーズが高いと思われる。そのような背景のもと、私は岩壁や土壁の体積含水率を非破壊計測できるポータブルな表面スキャナーの開発を開始した。

その表面スキャナーの原理は、片側開放型磁気回路[1]を採用したtime-domainプロトン核磁気共鳴である。永久磁石と高周波コイルでつくったセンサーを計測対象に近づけ、コイルからラーモア共鳴周波数に相当するラジオ波を照射して水分子中の水素原子の核スピンを励起し、そのあと発生する過渡的な核スピンの横緩和過程を同じコイルで検出する。探査深度(センサーから感度領域までの距離)は、磁石の大きさに応じて数mmから数cmである。

別用途として探査深度3cmの表面スキャナーは開発済みであるが[2]、それは磁石重量が50kgもあるので手で持ち上げて容易に壁などをスキャンできる重さではない。そこで、現在、磁気回路をより小型のものに一新して(探査深度を犠牲にすることになるが)、片手で持てる軽量タイプ(下図。重さ4kg)に切り替えたうえで、コイルの感度向上などを行っており、今回はその進捗状況と将来展望を発表する。

引用文献:
[1]: Nakashima, Y. et al. (2020) Nondestructive quantification of moisture in powdered low-rank coal by a unilateral nuclear magnetic resonance scanner. International Journal of Coal Preparation and Utilization (in press). https://doi.org/10.1080/19392699.2020.1722656
[2]: Nakashima, Y. (2019) Non-Destructive Quantification of Lipid and Water in Fresh Tuna Meat by a Single-Sided Nuclear Magnetic Resonance Scanner. Journal of Aquatic Food Product Technology 28, 241-252. https://doi.org/10.1080/10498850.2019.1569742