JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] Conservation of geoparks, natural geosites, and cultural heritage: weathering and damage assessment

コンビーナ:Luigi Germinario(Saitama University)、Celine Schneider(University of Reims-Champagne-Ardenne)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、Miguel Gomez-Heras(Universidad Autonoma de Madrid)、Patricia Vazquez(GEGENAA EA 3795 University of Reims Champagne-Ardenne)、Magdalini Theodoridou(Cardiff University)、宋 苑瑞(早稲田大学)

[MIS19-P02] 温湿度変化が塩類風化に及ぼす影響 —岩石表面の水分量および色彩測定による検証—

大井 將輝1、*佐藤 昌人2八反地 剛3 (1.筑波大学大学院生命環境科学研究科、2.防災科学技術研究所、3.筑波大学生命環境系)

キーワード:潮解、結晶化、水和、赤外線水分計、色彩色差計、野外風化実験

本研究では,水分に乏しい環境での塩類風化の発生過程を明らかにするため,間隙率が高い複数の岩石を用いて,野外風化実験を行った.実験には,直径および高さ5 cmの円筒形に整形した大谷凝灰岩,鵜原砂岩,小湊泥岩の3種類の岩石,塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウムの3種類の塩の20°C飽和水溶液を用いた.塩溶液に48時間浸したのち110°Cで炉乾燥した岩石試料を,野外の通風環境下に設置して風化実験を行った.試料が降雨に直接晒されないよう試料の上部には屋根を設け,風化実験中に岩石に供給される水分は大気中に水蒸気に限られた.風化実験は夏期と冬期にそれぞれ51日間行った.冬期の実験では,一日を通して日陰になる場所に試料を設置した.夏期の実験では,日射に晒される場所と日陰になる場所に,それぞれ岩石試料を設置した.

風化実験の結果を以下に示す.(1)岩石試料は湿度が下がる日中に破壊した.(2)冬期に比べ,夏期のほうが試料の風化は著しかった.(3)日射の当たる環境では塩化ナトリウムによる風化が明瞭であったが,日射のない環境では硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウムによる風化が著しかった.

赤外線吸光度や色彩測定の結果,湿度が高い夜間に塩が潮解し,試料表面の水分量が増加していた.また,湿度が下がる日中に塩が再結晶化し,試料が破壊した.それぞれの風化実験における温湿度環境を比較した結果,塩の潮解と再結晶化の繰り返しは冬期よりも夏期に頻繁に起きていたと考えられる.塩類風化に晒されている石造文化財や洞窟内壁,内陸部に発達するタフォニなどにおいても,本研究でみられたような温湿度環境の違いによる季節毎の風化速度の違いが生じているだろう.