[MSD47-P11] 陸域植生SIF/PRIの高分解能観測衛星の開発
キーワード:植生リモートセンシング
陸域生態系の植物の光合成量(一次生産量)の時空間変動の詳細かつ広域的な把握は,気候変動下の大気—生態系間の二酸化炭素(CO2)交換量の監視,その知見による温暖化緩和策および適応策の策定,さらにそれら成果の評価に不可欠である。地球観測衛星は広域の生態系の構造と機能を把握する強力なツールであり,これまで,衛星観測により得られる正規化植生指標(NDVI)等の情報から一次生産推定が試みられてきた。しかし,これらの指標は植物の緑葉量を表すのみであり,気象に応じて日々変化する光合成活性の変化を反映せず,大きな不確実性を伴っていた。一方,近年,高波長分解能衛星センサーの登場により,光合成過程の中心である光化学系から発せられる微弱な光,いわゆる太陽光励起クロロフィル蛍光(Solar-induced chlorophyll fluorescence, SIF)の観測が可能になった。SIFは従来の植生指数よりも直接的に光合成活性を反映する。また,光化学系では,蛍光の他にキサントフィルサイクルが余剰なエネルギーを熱として放出する役割を果たしており,キサントフィルサイクルの状態はPhotochemical Reflectance Index(PRI)と呼ばれる光学指標により評価することができる。個葉レベルでの研究では,光合成速度を推定するモデルにおいて,SIFとPRIの同時測定データの有効性が証明されている(Hikosaka and Noda 2019)。衛星観測スケールにおいても,光合成の生理学的メカニズムに基づいた一次生産量推定モデルの構築が必要とされる。しかし,衛星によるこれら2指標の同時観測は行われておらず,ESA(欧州宇宙機関)が計画中のFLEXミッションのみである。さらに,現行衛星での観測は,いずれも植生以外の観測を主目的としたセンサーによる副次的な観測に過ぎない。そのため,空間解像度が非常に粗く,地上観測サイトでの微気象学的手法によるフラックス観測との間に大きなスケールギャップがあり,衛星観測SIFおよびPRIによる光合成活性の推定の大きな壁となっている。
本提案では,陸域植生のSIFおよびPRIについて,同時・同一視野で,かつ高空間分解能での観測をする新たな地球観測衛星もしくはセンサーの開発を提案する。センサーのみの開発であっても,GCOM-C SGLIのような光学センサーと衛星に相乗りさせることができれば,NDVIのような従来の植生指標や植生プロダクトと併せて解析することができ,得られるデータと地上観測フラックスデータ等を融合した高精度な一次生産量の推定モデルの構築を可能にできるものと期待される。
本提案では,陸域植生のSIFおよびPRIについて,同時・同一視野で,かつ高空間分解能での観測をする新たな地球観測衛星もしくはセンサーの開発を提案する。センサーのみの開発であっても,GCOM-C SGLIのような光学センサーと衛星に相乗りさせることができれば,NDVIのような従来の植生指標や植生プロダクトと併せて解析することができ,得られるデータと地上観測フラックスデータ等を融合した高精度な一次生産量の推定モデルの構築を可能にできるものと期待される。