JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[J] 口頭発表

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[O-02] 変化する気候下での強風災害にどう取り組むか

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、座長:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)

[O02-01] 100年の台風変化と台風ハザードマップの開発

★招待講演

*筆保 弘徳1 (1.横浜国立大学)

キーワード:台風、日本上陸、台風ハザードマップ

2018年は台風21号、2019年は台風15号と19号。近年、強い台風が襲来して日本各地に甚大な被害をもたらしている。このように、科学技術が進み台風が精度良く予測できるようになった現代でも、今もなお台風は脅威となっている。本発表では、近年の台風研究による台風の気候変動と最新の台風防災の研究について紹介する。

近年の台風の傾向や台風に関する気候変動を語る時、大きな壁がある。それは、気象庁が提示する台風トラックデータが1951年以降と約70年しかないことである。1950年以前の台風の情報は、中央気象台がまとめた日本颱風資料(1944)の記録はあるが、海上のデータを作成できるほど十分な観測資料はない。さらに、台風の定義が現在と異なっているため、気象庁は台風トラックデータを作成できない。しかし、死者が1000人を超えるような甚大な被害を起こした台風は、室戸台風(1934)、枕崎台風(1945)など1950年以前に多い。そこで本研究は、日本に上陸した台風だけに注目して、独自の定義と当時の地上観測資料を用いて1900年から2014年における台風データを検出した。その115年間での台風上陸数や強度の結果から、(1)その数の増加または減少する傾向は見られなかった、(2)1990年代以降に、強い台風の上陸数の割合が増加していることが分かった。年ごとでの上陸する台風の数は、6・7月はエル・ニーニョ年で上陸数が多く、8・9月はエル・ニーニョ年で強い台風の上陸数の割合が高いことが明らかになった。

上記の研究による115年もの台風統計を調べても、2016年台風10号のように、東北地方の太平洋側に上陸した台風は過去にはなかった。岩手県に上陸した台風10号は、上陸時はそれほど強くはなかったが、20名以上の死者を出した。台風に対する防災意識が低い地域に台風が襲来すると、勢力が弱くても大きな被害を及ぼすことが明るみになった。日本に住んでいる以上、台風はいつでもどこにでもやってくると認識を変えて、日頃から台風に対する防災・減災への意識と対策を取るべきである。どの地域がどのような台風の時に強風や豪雨になるか、それを示すのが台風ハザードマップであるが、世の中には存在しない。

そこで本講演では、台風による風と雨の分布が日本列島の周辺地域の地形効果によってどのように強化されるかを示した台風ハザードマップの開発について紹介する。その開発手法は、地形のシフトという操作による台風アンサンブルシミュレーションを用いている。台風ハザードマップは、約1500個の台風の中心が半径300 kmの円内に入ったときのブルシミュレーションの結果から、平均風速と降雨の分布を示している。各ポイントで。たとえば、ハザードマップでは、台風の接近に関連する各地点で発生した平均風速は、日本列島の南部で高く、北部で弱かったことがわかります。これらのハザードマップは、日本列島上で台風関連の強風のリスクが高い地域を決定することが可能であり、それにより重要な防災情報を提供している。