JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-02] 変化する気候下での強風災害にどう取り組むか

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、座長:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)

[O02-03] 令和元年出水期における気象庁の取組について

★招待講演

*髙橋 賢一1 (1.気象庁)

キーワード:防災気象情報、災害に結びつくような気象現象

気象庁は、大雨や暴風などによって発生する災害の防止・軽減のため、気象等の特別警報・警報・注意報及び気象情報(以下「防災気象情報」)を発表しています。災害に結びつくような激しい現象が予想されるときには、まず数日前から気象情報を発表し、その後の危険度の高まりに応じて警報などを段階的に発表することで、市町村、都道府県、国の機関等の防災関係機関の活動や住民の安全確保行動の判断を支援しています。これらの内容や発表タイミングについては、平常時から防災関係機関との間で意見交換を行い、効果的な防災活動の支援となるよう努めています。
 「平成30年7月豪雨」において、気象庁では、防災気象情報の段階的な発表、市町村への支援、さらには記者会見を通じて早い段階から厳重な警戒の呼びかけを行いました。しかしこれらの情報発表や警戒の呼びかけや、市町村からの避難勧告等による避難の呼びかけが、必ずしも住民の避難行動につながらず、平成最大の人的被害を伴う豪雨災害となりました。これを踏まえ、平成30年度に気象庁では学識者に加え、報道関係者、自治体関係者、関係省庁による「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を開催し、主に以下の4点の課題への対応策について、「防災気象情報の伝え方の改善策と推進すべき取組」(報告書)としてとりまとめました。
  課題1 気象庁(気象台)や河川・砂防部局等が伝えたい危機感等が、住民等に十分に感じてもらえていない
  課題2 防災気象情報を活用しようとしても、使いにくい
  課題3 気象庁の発表情報の他にも防災情報が数多くあり、それぞれの関連が分かりにくい
  課題4 特別警報の情報の意味が住民等に十分理解されていない
気象庁はこの報告を踏まえて、令和元年度において以下の様な取組を進めました。

○気象庁(気象台)等のもつ危機感を効果的に伝えるための取組
  → 市町村や住民の防災気象情報に対する一層の理解促進
  → 災害が迫り来る状況における記者会見等による呼びかけ方の改善
 特に後者については、住民の”スイッチ”を危機対応モードに切り替えて頂けるよう、効果的なタイミングで早めに記者会見を実施することや、住民に直接呼びかけることを意識し、今後警戒すべき事項や防災上の留意事項を強く訴えた上で、「自助・共助」を促す呼び掛けを一層推進こと、大雨特別警報発表の可能性がある場合は記者会見にて言及することなどを行いました。
○防災気象情報をより一層活用しやすくするための取組
  → 分布の情報をより高解像度化(5kmメッシュから1kmメッシュへ)することを実施
  → 危険度の高まりが確実に伝わるよう、通知するサービスを令和元年7月より開始
  → 危険度に、地域の災害に対する脆弱性を示す情報を重ね合わせることを令和元年12月より開始
○各種の防災情報を効果的に分かりやすくシンプルに伝えていくための取組
  → 令和元年出水期より5段階の警戒レベルを明記して防災気象情報を提供
○大雨特別警報に関する取組
  → 平時からその位置づけや役割について、周知・広報を強化
  → 緊急時には状況に応じて早めに記者会見等で大雨特別警報発表の可能性について言及
  → 上記の際には、特別警報を待つことなく早め早めに避難することを呼びかけ

 これらの取組を進めてきたところですが、令和元年台風第15号や令和元年台風第19号等により再び甚大な被害が発生し、平成30年度にとりまとめた改善策の取組についてのフォローアップや、令和元年の災害を踏まえたさらなる改善策について中長期的な視点も踏まえ検討することを目的に、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を令和元年度も引き続き開催し検討を進めたところです。この中で、特別警報解除後も警戒が必要なことを地方整備局と気象台の合同記者会見等で注意喚起することや、過去事例を引用する際には地域に応じた詳細かつ分かりやすい解説を実施することなどが指摘されました。
 気象庁では、これらの取組を関係機関と連携して実施し、防災気象情報の伝え方の改善に引き続き努めていきます。