JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-02] 変化する気候下での強風災害にどう取り組むか

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、座長:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)

[O02-05] 爆弾低気圧により励起される富山湾の寄り回り波とその力学機構

★招待講演

*田村 仁1 (1.港湾空港技術研究所)

キーワード:寄り回り波、爆弾低気圧

富山湾の「寄り回り波」は江戸時代後期の古文書に記載があるなど古くから知られている異常波浪現象であり,これまでに何度もうねり性の高波が富山湾沿岸に被害をもたらしてきた.特に2008年2月には日本海上で発達した爆弾低気圧が巨大な寄り回り波を引き起こし,沿岸域への浸水や土砂堆積また海岸構造物の損傷など甚大な被害をもたらした.これは観測記録が残る過去数十年間の中では最大級のものとなった.今後起こりうる巨大波の襲来を事前に予測することは沿岸部の減災にとって極めて重要な課題である.しかしながら,寄り回り波はなぜ巨大化するのか?どのような気象擾乱が寄り回り波を励起するのか?そして将来気候において寄り回り波の発生動態はどう変化していくのか?など根源的な問いへの答えが未だに見いだせていない.
2008年の沿岸災害以降,多くの研究者が寄り回り波研究に着手し,特に第三世代波浪モデル(例えばSWAN)による寄り回り波の再現計算やそれに基づく高波発生の原因解明に尽力した.しかしながら再現計算では何れの波浪モデルでも観測された有義波高を大幅に過小評価(海域によっては観測値の30%程度以下)する結果となり,現在でも波浪モデルの高解像度化やデータ同化手法の導入,さらに機械学習による予測システムの構築など様々な予測手法の研究が進められている.本研究では,NOWPHAS観測のデータ解析,位相平均・分解モデルによるハインドキャストと感度実験,球面座標系・任意水深でのray方程式などいくつかの解析手法を用いて寄り回り波の物理機構の解明を試みた.