JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-04] 高校生によるポスター発表

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

[O04-P13] 中津層群神沢層から産出した貝化石を用いた古環境の推定

*小倉 穂高1 (1.横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)

キーワード:中津層群神沢層、貝化石、古環境、相模原

本研究では、神奈川県相模原市緑区に分布する中津層群神沢層の露頭から貝化石を採取し、それを分析して神沢層が堆積した当時の環境を推定した。

中津層群神沢層とは約250万年前に堆積した海成層であり、多種多様な化石が産出することで知られている。神沢層については、これまでに様々な研究が行われているが、気温、海水温、海流の影響、堆積した海底の底質、堆積した海域などは詳細に推定されていない。そこで、本研究では、神沢層が堆積した当時の気温、海水温、海流の影響といった古気候、神沢層が堆積した海底の水深、堆積した海域と海底の底質について調査し、考察した。水深については、先行研究から水深0~2-30mに堆積したと推定されているが、本研究に妥当性があるか検証するために調査した。

貝化石を分析した結果、当時の調査地付近の気温は、15℃から16℃前後であり、海水温は、最高で27~28℃、最低で15℃前後であると推定できた。これは、現在の神奈川県・静岡県沿岸部と同様である。また、海流については、暖流系の貝類が多く産出したため、暖流が優勢であったと推定した。ただし、寒流系の貝類も、暖流系の貝類よりは少なかったが、多く産出したため、現在よりも寒流の勢力が強く、暖流系と寒流の両方の影響を受けていたことが分かった。神沢層が堆積した海底の水深については、水深0~2-30mであったと推定できた。この結果は、先行研究と一致するため、本研究には、妥当性があるといえる。海底の底質については、大部分が砂底であり、一部では岩礁が発達していたと推定できた。また、神沢層が堆積した海域は、沿岸部であり、内湾であった可能性が高いことが分かった。以上の考察から、当時の調査地付近は、現在の相模湾や駿河湾沿岸部に近い環境であったといえる。

 今後は、神沢層から産出する花粉や有孔虫の化石、同時期に堆積した上総層群や三浦層群の化石と、本研究で扱った貝化石を比較し、より詳細に環境を推定しようと考えている。また、各年代の気候を推定し、気候変動を推定することも考えている。