JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-04] 高校生によるポスター発表

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

[O04-P17] 液状化現象による被害を考慮した避難経路の考察

*高橋 孝弥1 (1.土佐高等学校)

キーワード:地震、液状化

現在,高知市では南海トラフを震源とする大地震に備えて避難訓練を実施している.しかし私は,この避難訓練は地盤の液状化などの実際に起こりうる被害は考慮されていないことに気づき,実際の避難の際,訓練と同様に安全な避難ができるのかに疑問を持った.そこで,さらに現実的な避難を考えるために,地盤の液状化が避難に与える影響を調べた.

 本研究では高知市の潮江地区を研究対象地域とした.ここでは想定されている最大級の地震が発生した場合,地震発生後30分で避難困難の目安となる30cm以上の津波が到達することが想定されている.また,広い範囲で地盤の液状化が発生することが予測されており,ハザードマップも作成されている.本研究において当初このハザードマップの利用を考えたが,250mメッシュと非常に粗く,細かい部分を考慮することができなかったため,対象地域内のボーリング資料のN値や細粒分含有率などの数値情報を読み取り,それらを用いて地中の地震時せん断応力比動的せん断応力比や液状化指数を算出,その値をもとにその地点での液状化指数を求め125mメッシュのハザードマップを作成した.

本研究で作成したハザードマップと現行の避難路を重ねあわせたところ,広範囲で地盤の液状化が予測できる.また,対象地域では地震が3分以上続くと予測されているため,地震発生後4分程度経過しないと避難を開始することができない.さらに,垂直避難に2分程度要すると考えられるため,実質的な避難時間は24分程度である.そこで,24分以内での避難が可能かを,液状化による被害を考慮しない場合とする場合の2つのパターンで比較する.ここでは,液状化による影響が大きいと思われる地域に焦点を当てる.比較のために,この地域内から無作為に18か所を選び出し,その地点にいる人の避難をシミュレーションした.

まず,液状化による被害を考慮しない場合では,対象地域内の18か所全てが24分以内の避難が可能であることがわかる.さらに半数以上が15分以内と時間にかなりの余裕を持った避難が可能であることが読み取れる.このことから,行政機関は避難時間と人数を考慮して避難所を設置していることがわかる.

次に,液状化による避難路への被害を考慮する場合では,液状化による浸水のため,回り道の強制や道路の通行に時間がかかるといった影響が生じる.また,液状化の被害を考慮しない場合には確実に避難が可能である地域でも,液状化により最大1.5倍程度の時間がかかる.そのため24分以内の避難が不可能な地域や,津波到達が予測される避難開始後26分でも避難所に到着できない地域が存在することが分かった.

本研究の対象地域では,液状化の被害で避難時間に影響が出ることから,液状化に対して脆弱である,と評価できる.そのため,今以上の多数の避難路の確保や液状化対策が必要となる.また,時間内に全ての市民を避難させるためには避難所の変更や避難所の数を増やすことも必要かもしれない.
本研究は,液状化による避難路への被害が認識されている前提で考えたに過ぎない.現状では被害が生じる道は市民に示されておらず,実際に避難する際には安全な道を探しながらの避難になるため,本研究の予測以上の避難時間が必要になると考えられる.したがって,今後の課題は液状化により安全に避難できない地域が存在することを周知することである.そして,それらの地域では複数の避難路を検討したうえで,液状化による被害を考慮した避難訓練の実施を自治体に要請する必要がある.また,本研究では避難を阻む要因として液状化のみを考慮したが,実際はブロック塀や木造建築の倒壊など様々な要因が考えられる.そのため,他の要因にも目を向けて避難を考えていくことが,さらに現実的な避難を考えるうえで重要である.