JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] 大気圏ー電離圏結合

コンビーナ:Huixin Liu(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)、Loren Chang(Institute of Space Science, National Central University)

[PEM12-P16] ハワイで得られた大気光画像に見られる大気重力波・MSITDsの波源及び生成機構の解析

*内藤 豪人1塩川 和夫1大塚 雄一1坂野井 健2齊藤 昭則3中村 卓司4 (1.名古屋大学、2.東北大学、3.京都大学、4.国立極地研究所)

キーワード:大気光、MSTIDs、ハワイ、大気重力波

超高層大気の波動現象である大気重力波や伝搬性電離圏擾乱は、大気のグローバルな循環や衛星測位に大きな影響を与えることが知られている。夜間大気光の撮像を通して、これらの波動を可視化することができる。Matsuda et al. [JGR, 2014]は、3次元高速フーリエ変換を用いて大気光画像中に見られる波のパワースペクトル密度の水平位相速度分布の導出手法を提案した。しかし、この手法を赤道近くで得られた大気光画像の解析に用いた例は、Perwitasari et al. [AnnGeo, 2018]によるインドネシアでの解析を除いて、ほとんどない。本研究では、ハワイのハレアカラ観測点(20.7oN, 203.7oE)で2013年から2016年の3年間に得られた波長557.7 nmと630.0 nmの大気光画像にMatsuda et al. [JGR, 2014]の解析方法を適用し、ハワイ上空の大気重力波とMSTIDsの統計的な特徴を明らかにするとともに、日本で見られた同種の波動の統計的特徴[Takeo et al., JGR, 2017; Tsuchiya et al., JGR, 2018]との比較を行った。

 3年間の位相速度スペクトルの平均から、波長557.7 nmの大気光画像に見られた大気重力波において、夏と冬の比較で東西方向の伝搬に違いは見られなかった。しかし、信楽や陸別では、夏に東、冬に西と伝搬方向が反対になることが分かっている。これについては昨年5月に開催されたJpGU2019において、中間圏ジェット気流によるウインドフィルタリング効果によるものだと考えられることを発表した。また、大気重力波の波源について、対流圏の再解析データを用いて、対流圏の上昇流及びジェット気流から新たに各季節ごとに考察を行った。その結果、対流圏の上昇流については、波源が期待される領域に強くは見られなかった。これについては平均を取っていることが原因だと考えられるため、今後は観測日ごとに解析することを考えている。

 波長630.0 nmの大気光画像に見られたMSTIDsにおいては、パワースペクトル密度に関しては冬が最も強く、主に東西方向に波が伝搬していた。このMSTIDsの生成機構については、昨年10月に開催されたSGEPSS2019において大気重力波によるものだと考えられることを発表した。このMSTIDsの生成に関わる大気重力波の波源についても、同様に再解析データを用いて、対流圏の上昇流及びジェット気流から考察した。その結果、対流圏の上昇流については、波源が期待される東西方向に強くは見られなかった。これについても同様に平均を取っていることが原因だと考えられるため、今後は観測日ごとに解析することを考えている。また、冬に見られた東西方向の伝搬について、東西方向のケオグラムと波数スペクトルを作ることでイベントごとに詳細に解析し、日本で観測されるものとの比較を行った。