JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG68] 活断層による環境形成・維持

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、山野 誠(東京大学地震研究所)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、濱元 栄起(埼玉県環境科学国際センター)

[SCG68-P02] 阿寺断層での「露頭スケール」での帯磁率・比抵抗分布

枌 周平1、*後藤 忠徳1 (1.兵庫県立大学大学院生命理学研究科)

地上の様々な地域で地質調査がなされている。地質調査とは、ある地域の地下の地質を体系的に調査することを指し、地質図や地質モデルを作成することが一般的である。その目的は、例えば大地の形成過程を理学的に明らかにするため、あるいは建物や橋等の建築物を建築する際にその土地の性質を工学的に解析するためなど、多岐にわたっている。地質調査の手法は様々であり、露頭の観察や、掘削による地下観察、空中写真や衛星画像の解析などに基づいている。ここで露頭観察を例に取ると、地表に露出している岩石や地層の種類や特徴、上下の類従関係、地層の走向・傾斜など、肉眼による観察を主体としている。その上で微細な特徴(例えば岩石の成分、微小クラックの密度、透水性など)については、露頭において岩石試料を採取し、実験室内での試料分析がなされてきた。しかしながら、肉眼で判別不可能な微細情報の空間分布の把握においては、どこでどれくらいの数量の試料を採取すればよいかを、調査現場において目視で判断することは困難である。また肉眼での地質調査には、岩石判別などの能力を経験により会得しておく必要もある。
 そのため近年では、目視による観察情報に加えて、岩石や地層の物性値を定量的・高密度・連続的に取得することにより、地質情報を増加させる試みが行われている。例えば、海底の堆積物コアについては、目視での地質学的な記載を行うとともに、カラースキャナーを用いた色情報のデジタル化や、X線CTスキャナーを用いた堆積物の内部構造の撮影、マルチセンサーコアロガーによる帯磁率・導電率・密度・地震波速度などの連続的な測定が行われている。このような物性値の測定によって磁性鉱物の含有量や、空隙の形状といったことが明らかになると期待される。そこで本研究では、携帯型の物性測定センサーを露頭での地質調査に適用し、高密度の露頭測定を行うことで、どの程度の地質情報を増やすことができるかについて、検討を行う。調査地域としては、岐阜県中津川市の阿寺断層を選択した。阿寺断層は大規模な活断層であり、断層運動に伴う岩盤の破砕などによって、物性値が変化していることが期待される。中津川市の断層露頭(川上露頭)において、露頭の上方~下方へ2mの測線を配置し、測線上で5cmの間隔で帯磁率・比抵抗の現場測定を実施した。その結果、1) 帯磁率は断層コア部に近づくにつれて上昇する傾向と、2) 比抵抗は断層コア部ほど低下する傾向が見いだされた。これらは断層運動に伴う岩盤の破砕や鉱物の生成に関わっていると考えられる。このような微細な特徴は肉眼では観察不可能であり、現場での物性測定の有用性が示されたと考えられる。