JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG70] 地震動・地殻変動・津波データの即時把握・即時解析・即時予測

コンビーナ:小木曽 仁(気象庁気象研究所)、山田 真澄(京都大学防災研究所)、近貞 直孝(防災科学技術研究所)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

[SCG70-09] 津波に伴う大気ラム波の定量的検討:微気圧観測による津波の即時的予測の可能性

*中島 健介1山本 真行2 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、2.高知工科大学システム工学群)

キーワード:津波、大気ラム波、微気圧観測、インフラサウンド

大規模な津波な大気ラム波(地表面に沿って音速で伝わる長周期の大気波動)を励起することが知られており、その観測は津波波源のインバージョンなどに有用である (e.g. Arai et al 2011; Mikumo et al 2008)。本発表では、(1) 津波に対する圧縮性大気の応答に関する数値実験、(2) その結果の理論的考察、(3) 津波の即時的予測への可能性について議論する。

数値実験の中で、津波は3種類の大気波動(音波、重力波、およびラム波)を励起する。注目すべきこととして、津波の幅広いパラメタ(断層運動の水平スケール、ライズタイム)にわたり、励起されるラム波の振幅が、津波の様相(波高と波形)を極めて良く再現することがわかった。この「ライズタイムに鈍感である」という性質は、これまでに用いられてきた仮定(ライズタイムとラム波振幅は反比例)とは全く異なる。この性質は、津波に対する大気応答過程(hydrostatic adjustment; Bannon 1995)の理論的考察を通して直感的にも理解できる。

この結果は、断層運動速度の遅い、いわゆる「津波地震」によるものを含めて、微気圧観測により津波の定量的な即時的予測が可能であることを強く示唆する。当日は、2011年東日本東方沖地震(Arai et al 2011 の結果をよく再現する)、および、想定南海地震に関する計算例も示す予定である。