JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学

コンビーナ:松尾 功二(国土交通省国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所 )

[SGD02-P05] 鉛直重力計アレイ観測による地下深部引力変動検出の試み

*田中 俊行1 (1.公益財団法人地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所)

キーワード:重力、地下水、鉛直重力計アレイ、局地客観解析

著者は,地震活動に関連した地下の質量変動検出を目指して,瑞浪超深地層研究所(MIU)の地上と地下で重力連続観測(VGA観測)を行ってきた.VGA観測はMIU埋め戻しのために2019年10月をもって終了し,合計約5年間分のデータが蓄積された.
上下2台の重力和は,大気補正の後,地下重力計位置より下方からの引力効果を反映する(Tanaka & Honda, 2018).田中(2019, JgGU)では,2018年5月21日から90日間のVGA観測データの大気補正に局地客観解析(LANAL)を導入した.そのアブストラクトに示した数値は時刻ずれが起きたため過大であった.以下の様に修正する:
1. メソ客観解析(MANAL)との差の標準偏差(0.66 -> 0.13 microGal)
2. 瞬間値最大差(2.4 -> 0.6 microGal)
したがって,MANAL(3時間値)からLANAL(1時間値)への移行は妥当である.大気補正の内,振幅比で観測点近傍引力効果が97%(peak to peakで14 microGal),それ以外の効果が3%(peak to peakで0.4 microGal,前者との相関係数は0.48)と計算されたので,後者を便宜的に前者に0.03を掛けた物として採用した.(なお,大気補正を気圧アドミッタンスファクター法を採用しても,以下の議論の結論は変わらなかった.)また,大阪北部地震で生じた重力値ステップは補正した.
その結果,重力和(図A)と潮汐除去済みのTGR350m孔の被圧地下水位(図B)は,逆相関(相関係数-0.95)を示した(その解釈は,Tanaka et al., 2006, Gcubed).したがって,重力和は地下の質量変動を反映していると判断出来る.更に,この重力和から被圧地下水位と相関成分を除去し,地下水以外に起因する重力変化の抽出を試みた.ここでは,最小二乗法による線形回帰を行い,残差重力値を得た(図C).6月下旬に東海スロースリップイベントが発生した(気象庁地震・火山月報)が,特段の変化は見られなかった.本地域でのM5クラスのゆっくり滑りでの重力変化は,サブマイクロガルオーダーであり,背景ノイズとの分離は困難かも知れない.