JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学

コンビーナ:松尾 功二(国土交通省国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所 )

[SGD02-P09] 干渉SAR解析技術の防災への利活用

*中村 貴子1六川 修一1 (1.東京大学)

キーワード:干渉SAR, 防災,豪雨,土砂災害

本研究は、干渉SAR解析を用いて土砂災害発生前後の地盤変動の抽出とモニタリングの可能性を考察するものである。また、洪水域の抽出においては、Sentinel-1A/1BのVH偏波画像を用いた解析結果とALOS-2/PALSAR-2を用いた解析などから土砂災害域の発災前後の解析結果などを紹介する。解析は基本的には過去に災害が発生した場所で、その発生前後の時期に取得された衛星画像データを用いて行った。得られた成果からは、近年多発する土砂災害や水害の危険地域において災害の発生時期をある程度予測し、発災時の対応のための情報が得られる可能性がある。実際に被災地域をいくつか選定し、モデル地域として干渉SAR解析技術を用いた地盤変動解析を行った。解析地域は、北海道胆振地方中東部の震源地北部に位置する厚真町を中心とする地域、台風19号の被災地である宮城県、関東北部地域、長野県、愛知県、広島県南西部、岡山県南部、愛媛県、佐賀県など広域にわたる解析例を紹介する。これらの地域は、近年、地震や台風による大量の降水などが引き金となって起こった土砂災害、河川の決壊や砂防ダムの放水などで洪水に見舞われた地域である。使用データはALOS/PALSARのアーカイブデータの中から、衛星稼働期間中に取得された偏波:HH、入射角:34.3°の画像データ、ALOS-2/PALSAR-2 (レベル1.1,偏波:HH,入射角:34.3°)、Sentinel-1A/1B(VV:水平偏波とVH:クロス偏波)を用いた。干渉SAR時系列解析の適用においては、複数の軌道の干渉画像を統合的に解析する平滑化拘束付きインバージョン手法を用いて微小な変動の検出を可能にしている。これらの解析結果からは、崩壊跡だけでなく、未崩壊の地点でも強い変位が見られる地域も散見されており、これから崩壊が起こる可能性の高い地点が抽出されている可能性が高いと思われる。また、Sentinel-1A/1BのVHクロス偏波画像からは水害の分布区域がかなり正確に抽出されており、ハザードマップとの対比でもよい一致を示す。この画像は画像解析の初期段階で生成される強度画像であり複雑な解析の必要がなくまた単独の画像から作成できるためタイミングよく撮影された画像が入手できれば早急な現況把握に役立つ可能性が高いと思われる。干渉SAR解析を用いたモニタリングを実運用するためには、対象地域の地質や地形の特徴を十分考慮し、平時から対象地域に関するベースとなる情報を蓄積整備しておくことが重要であると思われる。有事の際には最新の観測データを直ちに入手し、単独でまたはアーカイブデータと合わせて追加解析を行うことにより、最新情報が入手可能となる。