JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC43] Magma crystallization, fragmentation, and their roles on volcanic eruption

コンビーナ:三輪 学央(防災科学技術研究所)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、Pranabendu Moitra(University of Arizona)

[SVC43-P07] 霧島新燃岳2018年噴火における噴火様式の変化と噴出物の岩石組織との関係

*正畑 沙耶香1前野 深2鈴木 由希3安田 敦2外西 奈津美2 (1.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学地震研究所、3.早稲田大学教育•総合科学学術院)

キーワード:新燃岳、結晶サイズ分布

石基中の結晶量や結晶サイズ分布(CSD)には火道を上昇するマグマの減圧や冷却プロセスに応じた結晶の核形成と成長の履歴が反映される。近年の噴火では、噴火事象の記録を噴出物と比較して対応づけることが可能であるため、石基組織の解析を通して噴火様式の支配要因について理解が進められる可能性がある。九州南部に位置する霧島新燃岳では2011年に続き2018年にも噴火が起きた。どちらも噴火様式が時間とともに推移し、またその推移は異なっていた。2011年では準プリニー式噴火の後に溶岩ドーム噴火が起こったが、2018年は溶岩ドーム噴火のみであった。これらの噴火推移の違いは、噴火事象の多様性や分岐の要因を理解する上で重要であるにも関わらず、噴出物の解析をもとにした議論は十分に進んでいない。そこで本研究では、2018年噴火の各段階での噴出物の岩石組織や化学組成を比較し、マグマの挙動と噴火のプロセスを明らかにする。またSuzuki et al. (2018) により石基組織の解析が行われた2011年噴火と比較し、噴火推移の違いを生んだ原因について考察する。2018年噴出物を種類や特徴によってP1(初期軽石)、P2(P1以降の軽石)、L(火口縁から流出した溶岩の先端)、B(ブルカノ式噴火による弾道放出物)の4つに分類した。それぞれに対し、みかけ密度測定、偏光顕微鏡による組織観察、構成鉱物の同定を行なった。EPMAを用いて主要鉱物および基質ガラスの化学組成を測定し、マスバランス計算より結晶度を計算した。FE-EPMAを用いて斑晶鉱物や組織の画像取得、元素マッピングを行なった。このうち斜長石マスク画像を用いてCSD、結晶数密度を算出した。三次元結晶形の復元、結晶サイズ分布の値は主にHiggins (2000) の手法に倣った。構成鉱物の種類、組成の分析データと、噴出物組成に関する既存データによると、マグマは2011年噴火のものとほぼ同じであるが、石基組織の特徴はサンプル種ごとに異なり、マグマの実効的過冷却度の違いをよく反映している。石基結晶度はLが高く、P1とBが続き、P2が最も低かった。結晶数密度は高い方からP1、L、B、P2の順で、Lの中ではサンプルごとにばらつきがあった。CSDのピークは高い方からP2、P1、L、Bの順で、また傾斜はP2の方がP1より急であった。以上の結果よりP1は核形成が、Lは結晶成長が最も優勢、P2は結晶成長が最も低い、Bは結晶成長が主だが核形成もする、という条件で結晶化したと考えられる。核形成、結晶成長の速度は実効的過冷却度に対して釣鐘形状で表されることを考慮すると、実効的過冷却度が低い順にL、B、P1、P2と並べることができる。実効的過冷却度は概ねマグマ上昇速度と対応づけられる。比較的低速で上昇し定置した溶岩、溶岩の定置以前に射出され急激に冷却・減圧された弾道放出物、溶岩にほど近い速度で結晶化が進行しながら上昇した初期軽石、それよりも速い速度で噴出した初期以降軽石、というそれぞれの噴出までの経路を考えることができる。このような軽石の特徴の変化に加えて、2011年の噴出物と比べてCSDの値が全体に高いこと、またP2と2011年準プリニー式噴火軽石、Bと2011年弾道放出物の特徴が似ていることから、2018年噴火ではマグマの噴出率が2011年よりも低く、かつ変動していたと考えられる。人工衛星による溶岩ドームの時系列観測(防災科学技術研究所)では、ほぼ一定の噴出率で溶岩ドームが成長したと推定されているが、噴出物の石基組織の解析結果からは、溶岩の溢流速度は一定でなかったことが示唆される。