日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.08 (Zoom会場08)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、座長:竹川 暢之(東京都立大学 大学院理学研究科)

11:00 〜 11:15

[AAS05-07] 2-メチル-2-ブテンとtrans-2-ブテンのオゾン酸化反応からの新粒子生成

*猪俣 敏1、廣川 淳2、坂本 陽介3 (1.国立研究開発法人国立環境研究所、2.北海道大学、3.京都大学)

キーワード:2-メチル-2-ブテン、trans-2-ブテン、オゾン酸化、二次有機エアロゾル、クリーギー中間体

大気エアロゾルは太陽光を散乱・吸収することで、地球大気の熱収支に直接関与する効果と、エアロゾルが吸湿性であった場合、雲凝結核(CCN)として働き、雲特性の変化を通して、間接的に気候に影響を及ぼす効果があることが知られている。近年、酸化が進んだ極低揮発性の有機化合物(ELVOCs: Extremely Low Volatility Organic Compounds)が粒子の核形成に重要な役割を果たしていることが指摘されるようになってきた。新粒子生成は、グローバルなCCNインベントリの約半分を占めることが見積もられていて、有機化合物からの新粒子生成を理解することは、気候への間接効果を定量的に評価していくのに重要である。我々のグループでは、エチレン(C2H4, CH2=CH2)、イソプレン(C5H8, CH2=C(CH3)−CH=CH2)のオゾン酸化反応系において、クリーギー中間体が関与するオリゴマーがガス相で生成し、新粒子生成に寄与することを見出した。イソプレンの系では、炭素数1の安定化クリーギー中間体(CH2OO, C1-sCI)と炭素数4のもの(CH2=C(CH3)−CHOO/ CH2=CH−C(CH3)OO, C4-sCI)が生成して粒子生成に関与するが、エチレンの系では、C1-sCIしか生成しないので、C1-sCIですら粒子生成に重要な役割を果たしていることがわかった。本研究では、C2-sCI((CH3)CHOO)の粒子生成への役割を調べるため、2-メチル-2-ブテン(C5H10, (CH3)CH=C(CH3)2)、trans-2-ブテン(C4H8, (CH3)CH=CH(CH3))とオゾンとの反応系について調べた。2-メチル-2-ブテン、trans-2-ブテンは、燃料蒸発ガスの中で排出量の多い炭素数5と4のアルケンである。これらの系では粒径の小さい粒子しかできないことが分かった。負イオン化学イオン化質量分析法によるガス相の生成物の解析とあわせて、C2-sCIの粒子生成への役割を議論する。