日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 15:30 〜 17:00 Ch.08 (Zoom会場08)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、座長:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)

15:30 〜 16:00

[AAS05-18] 生態系–大気化学相互作用と地球システムモデル

★招待講演

*羽島 知洋1、阿部 学1、伊藤 彰記1、伊藤 昭彦2、大垣内 るみ1、斉藤 和之1、須藤 健悟3、河宮 未知生1、野口 真希1、Patra Prabir1、山本 彬友1、横畠 徳太2、渡辺 真吾1、渡辺 路生1 (1.独立行政法人 海洋研究開発機構、2.国立環境研究所、3.名古屋大学)

キーワード:地球システムモデル、生物地球化学、大気化学

陸域生態系や海洋はCO2をはじめとする各種温室効果ガスのソース/シンクになるとともに、大気物質の一部が沈着し、生態系に影響を与える。このように大気化学過程と生態系過程は相互作用をもっており、これらをモデル化しシミュレーションに反映させる取り組みが始まっている。特に、温暖化予測研究に用いられることの多い地球システムモデル (気候モデルを物理コアとしつつ、海洋や陸域における生態系・物質循環過程が導入されている予測モデルの一種)では、従来からある炭素循環だけでなく窒素循環なども扱えるようになっており、様々な大気化学–生態系相互作用がシミュレーションに反映されるようになっている。本発表ではまず、発表者が長く取り組んできた全球の炭素循環について、全球CO2収支における生態系過程の役割などについて最新の研究成果(特にCMIP6における地球システムモデルを用いた実験)を紹介する。大気寿命が長いCO2はとりわけ海陸シンクの役割が重要であるが、特に近年ではそれらのフィードバック不確実性や人為排出停止後の長期的振る舞いなどにも関心が高まっている(Arora et al. 2020 Biogeocience; MacDougall et al. 2020 Biogeoscience)。また、発表者らが開発してみた地球システムモデル(MIROC-ES2L, Hajima et al. 2020 GMD)においても一部の生態系―大気化学過程に注目した開発が行われており、例えば窒素等の沈着が与える生態系への影響等を考慮できるようになっており、人為的な農地への窒素施肥や窒素の沈着が生態系の物質循環過程に影響を与えている様を描き出せるようになっている。さらに、CO2以外の温室効果ガス人為・自然放出と気候とのフィードバックにも注目し、CH4やN2Oの生態系–大気化学相互作用の導入の取り組みも開始している。本発表ではこれに関する取り組み・展望についても紹介したい。