16:45 〜 17:00
[AAS05-22] 南極昭和基地における大気中N2O同位体比の経年変化
キーワード:温室効果気体、安定同位体比、一酸化二窒素、南半球
N2Oは対流圏大気中濃度が増加している温室効果気体の一つであるとともに今世紀で最も重要な成層圏オゾン破壊気体である。N2Oの発生源には海洋,自然土壌,農業・化石燃料燃焼・化学工業などの人間活動などが含まれる。濃度観測やフラックス観測に加えてN2Oの安定同位体比(15N/14N,18O/16O 比および非対称NNO分子内の位置別 15N/14N比)はN2Oの起源や生成・消滅機構を推定する指標として利用されてきた。大気中N2O安定同位体比の経年変化は各発生源の相対寄与率の推定に利用されうるため,極域フィルン大気や地上観測点で採取された大気試料の分析が行われてきた。しかし,南半球における大気中N2O安定同位体比の長期観測例は極めて少ない。さらに,キャリブレーションに研究室間の相違があることから既往研究の報告値を直接比較することは困難で,同位体比の南北勾配については十分明らかになっていない。
本研究では,南半球における大気中N2O安定同位体比とその経年変化を明らかにし,それらを同一研究室で測定された北半球における値と比較することを目的とした。地表大気試料は,南極昭和基地(69°S, 40°E) において1998–2020年の期間に2–4か月間隔でアルミニウム製シリンダーに約15MPa採取された。極地研に保存されているシリンダーからN2O濃度よび同位体比分析用試料を1Lガラス製フラスコに分取した。 N2O同位体比をGC-IRMSを用いて測定した。この測定システムは,北半球の3つの観測点,波照間島 (24°N, 124°E), ロシア・ノボシビルスク (55°N, 83°E), カナダ・チャーチル (59°N, 94°W)における経年変化の解析にも用いられているものである。濃度はGC-ECDを用いて測定した。
昭和基地においてN2O平均窒素同位体比(δ15Nbulk)は北半球の観測点と同様に0.04‰ yr−1で減少していた。同一年で比較すると,δ15Nbulkは南半球の方が約0.2‰高い。酸素同位体比 (δ18O) も北半球と同様な減少傾向を示したが,分析精度の範囲を超える南北勾配は検出されなかった。分子内15N分布 (SP)は増加・減少傾向は示さず,南北勾配も検出されなかった。
これらの結果は,N2O 濃度は北半球の方が高いこと,自然発生源と人為発生源の分布は両半球で同一ではないことも考慮すると,南半球の発生源が大気中N2O増加に及ぼす影響が非常に小さいことを示唆している。講演では,単純なモデルを用いた南北両半球の発生源の同位体組成の解析結果についても議論する。
本研究では,南半球における大気中N2O安定同位体比とその経年変化を明らかにし,それらを同一研究室で測定された北半球における値と比較することを目的とした。地表大気試料は,南極昭和基地(69°S, 40°E) において1998–2020年の期間に2–4か月間隔でアルミニウム製シリンダーに約15MPa採取された。極地研に保存されているシリンダーからN2O濃度よび同位体比分析用試料を1Lガラス製フラスコに分取した。 N2O同位体比をGC-IRMSを用いて測定した。この測定システムは,北半球の3つの観測点,波照間島 (24°N, 124°E), ロシア・ノボシビルスク (55°N, 83°E), カナダ・チャーチル (59°N, 94°W)における経年変化の解析にも用いられているものである。濃度はGC-ECDを用いて測定した。
昭和基地においてN2O平均窒素同位体比(δ15Nbulk)は北半球の観測点と同様に0.04‰ yr−1で減少していた。同一年で比較すると,δ15Nbulkは南半球の方が約0.2‰高い。酸素同位体比 (δ18O) も北半球と同様な減少傾向を示したが,分析精度の範囲を超える南北勾配は検出されなかった。分子内15N分布 (SP)は増加・減少傾向は示さず,南北勾配も検出されなかった。
これらの結果は,N2O 濃度は北半球の方が高いこと,自然発生源と人為発生源の分布は両半球で同一ではないことも考慮すると,南半球の発生源が大気中N2O増加に及ぼす影響が非常に小さいことを示唆している。講演では,単純なモデルを用いた南北両半球の発生源の同位体組成の解析結果についても議論する。