日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.07

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS05-P02] 三酸素同位体組成を指標に用いた対流圏ガス状亜硝酸の起源解明

*中川 書子1、頼 鵬1、平野 一哉1、伊藤 昌稚1、角皆 潤1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:ガス状亜硝酸、三酸素同位体組成、都市大気、二酸化窒素、一酸化窒素

ガス状亜硝酸(HONO) は、日中は光分解反応によりOHラジカルを放出して、多様な光化学反応を駆動するため、その大気中の挙動や起源を解明することは非常に重要である。HONOの発生源には、自動車や工場の排気ガス、土壌からの放出などの直接排出起源と、大気中の一酸化窒素(NO)の気相均一反応や、二酸化窒素(NO2)のエアロゾル表面や地表面における不均一反応に由来する二次生成起源が挙げられる。しかし、各起源がそれぞれどの程度HONOの生成に寄与しているのかまでは明らかになっておらず、未知の発生源が存在する可能性も含めてHONOの起源に関する知見は乏しい。そこで本研究では、HONOおよび前駆物質であるNO2とNOの三酸素同位体異常(Δ17O≒δ17O-0.52×δ18O)を定量することで、各起源の寄与率を見積もることに挑戦した。

そこで、まず、HONOおよびNO2を濃度定量用のフィルターパック法を使って同時に捕集して、そのΔ17O値を定量する方法を開発したが、大気中のHONOを捕集するプロセスでブランク物質が少量含まれてしまい、その影響を受けて定量したHONOのΔ17O値が真値から外れてしまうことが分かった。そのため、フィルターに捕集されるブランクの影響を補正して真値を求めることが可能な捕集システムを確立することにした。具体的には、濃度定量用のHONO捕集用アルカリ含浸フィルターよりも捕集効率をわざと下げたフィルターを複数枚(3枚)使って、後方のフィルターほどHONO捕集量が少なく相対的にブランクの割合が増えるように捕集した。そしてHONOとブランク物質の二成分混合モデルを使ってHONOのΔ17O値の真値を求めることに成功した。また、ブランク物質のΔ17O値からブランク物質はNO2であることが分かった。

本研究で改良したフィルターパック捕集方法を用いて、名古屋市の郊外域で昼夜別に大気観測を行った。大気中のHONOおよびNO2、NOのΔ17O値を用いて、直接排出由来とNO気相反応由来、NO2不均一反応由来の寄与率をそれぞれ見積もった。その結果、直接排出とNO2不均一反応の寄与がそれぞれ4~5割程度であり、NO気相反応の寄与は数%程度であることを明らかにした。