日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.07

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS05-P26] つくばFTIRで観測されたオゾン高度分布の経年変化

*村田 功1、中島 英彰2、森野 勇2、武田 真憲1,2 (1.東北大学大学院環境科学研究科、2.国立環境研究所)

キーワード:フーリエ変換型分光計、オゾン、高度分布

東北大学と国立環境研究所では、つくばでの NDACC観測規約に基づくFTIR観測を1998年から行っている。今回報告するオゾンについてはNDACC/IRWGでは10μm帯での解析が推奨されているが、Bruker IFS120HRによる観測を行っていた際にはTCCONとの兼ね合いで10μm帯を観測するMCT検出器を使用していなかった期間があり、ここではBruker IFS125HRによるMCT検出器を用いた観測を再開した2014年以降を対象とする。なお、2006年以前にもBruker IFS120MによるMCT検出器を用いた観測は行っているが、当時は装置の光軸調整が不完全であり、高度分布の導出に重要となる装置関数を用いた観測スペクトルの補正がまだ十分検証できていないため、今回は対象外としている。
解析にはロジャーズ法を用いたスペクトルフィッティングプログラムSFIT4を用い、NDACC/IRWGで推奨する解析パラメータを用いて1000.0 - 1005.0 cm-1の波数領域のスペクトルからオゾン高度分布を導出した。この波数領域には多数のオゾン吸収線が存在し、これらの情報を組み合わせることによって独立した高度情報量の目安であるDOFSが5程度と高い値が得られる。なお、装置関数に関しては現在使用しているBruker IFS125HRは光軸調整がほぼ完全で、HBrセルを用いた装置関数の測定でも問題がないことが確認されているため、補正は行っていない。
まず、導出された高度分布の精度を検証するため、高層気象台(館野)のBrewer分光計およびオゾンゾンデの観測との比較を行った。高層気象台は国立環境研究所と道路を隔ててすぐ隣にあり、ほぼ同じ地点の観測と見なすことができるため検証には有利である。検証データにはWOUDCに登録されている館野のオゾン全量およびオゾンゾンデデータを使用し、2019年の同日観測について比較した。全量に関しては、平均で4.9 % FTIRの方が大きく標準偏差は2.4 %であった。この傾向はVigouroux, et al. [2008]と一致しており、おそらく吸収線強度の誤差によると思われる5 %のバイアスを除けばよく一致していることがわかった。次に、高度分布についてオゾンゾンデの高度分解能をFTIRに合わせた上で比較したところ、およそ18-35 kmの高度では10%以内で一致しており、0 - 9.8 km, 9.8 - 18.3 km, 18.3 - 27.7 kmの3層に分けて比較したところ、それぞれオゾンゾンデに対するパーシャルカラムの比が1.02 ± 0.05, 1.11 ± 0.19, 1.03 ± 0.05となり、数%から10%程度で一致することが確かめられた。
次に、上記の3層に27.7 km以上を加えた4層及び全量の時系列に直線をフィットして経年変化を調べた。いずれも2014 - 2020年の期間全体としては-0.4 ~ -2.8 %/年の減少傾向を示した。この減少の要因は今のところ不明であるが、気象庁のオゾン全量の経年変化を見ても、札幌、つくば、那覇ともに2014年以前は横ばいまたは若干の上昇傾向があったものが2014年以降は減少傾向に転じており、今後解析を進める予定である。