日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 成層圏・対流圏過程とその気候への影響

2021年6月3日(木) 13:45 〜 15:15 Ch.06 (Zoom会場06)

コンビーナ:木下 武也(海洋研究開発機構)、坂崎 貴俊(京都大学 大学院理学研究科)、高麗 正史(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻大気海洋科学講座)、江口 菜穂(Kyushu University)、座長:高麗 正史(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻大気海洋科学講座)

14:15 〜 14:35

[AAS06-15] シベリアの寒冷化がもたらす初冬の極夜ジェットの季節進行の停滞

★招待講演

*安藤 雄太1,2、山崎 孝治3、立花 義裕2、小木 雅世3、浮田 甚郎1 (1.新潟大学 理学部、2.三重大学 大学院生物資源学研究科、3.北海道大学)

キーワード:成層圏、ロスビー波、海陸コントラスト

冬季北半球では高緯度の成層圏は強い西風(極夜ジェット)が特徴的である.季節内変動の時間スケールでは,極夜ジェットのシグナルは上部から下部成層圏へ下向き伝播する.この変動は北極振動と関連するため,極夜ジェットは成層圏だけでなく対流圏の気候にも重要な役割を果たす.気候値の極夜ジェットは,風速が10~12月に単調増加し1月前半に最大に達する.その後単調減少する.しかし,日平均データで見ると11月(2月)後半に一時的に増加(減少)が止まる.この現象を本研究では季節進行の「停滞」と呼ぶ.2月後半の停滞は成層圏突然昇温(SSW)の発生が1月より少なくなることと関連すると考えられるが,SSWが少ない11月後半は知られていない.本研究は気候値の極夜ジェットの11月後半における季節進行の停滞を力学的な視点から調べ,その要因を探ることを目的とする.高緯度の100hPaのEPフラックスの鉛直成分を見ると,過去も近年も11月後半に急増し下部成層圏で収束した.よって,プラネタリー波の対流圏から成層圏への上向き伝播の急増と極夜ジェット減速が関連することが明らかとなった.このプラネタリー波の源を調べるため,100hPa波活動度フラックスの鉛直成分を見ると,11月後半にシベリア域で正の値であった.プラネタリー波に関連した対流圏下層の気温を見るため,850hPa気温のシベリア域とそれ以外の地域の領域平均した指数の時系列を作成した.11月後半にその差が最大に達していた.以上の結果から,シベリア域が陸であるのに対し他の領域が海を含むため,海陸の熱的コントラストがプラネタリー波を形成し,極夜ジェット停滞を引き起こしたことを示唆した.