日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC25] ニューノーマルの雪氷学

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.13 (Zoom会場13)

コンビーナ:永井 裕人(早稲田大学 教育学部)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、石川 守(北海道大学)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、座長:舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、永井 裕人(早稲田大学 教育学部)

09:00 〜 09:15

[ACC25-01] COVID19状況下での現地調査:アラスカとシベリアの事例

★招待講演

*岩花 剛1 (1.アラスカ大学・国際北極圏研究センター)

キーワード:新コロナウィルス、フィールドワーク、アラスカ、シベリア

本発表では、アラスカおよびシベリアにおけるフィールド調査について、COVID19の流行がもたらした影響と研究関係者の対応を紹介する。発表者が生活の拠点としているアラスカ州・フェアバンクスは、アラスカの主に陸域を対象としたフィールドワークの拠点であり、全米各地および世界中の研究者がアラスカ大学などの研究インフラを利用してきた。2020年3月以降夏季フィールドシーズンの間、州外からの渡航者に2週間の自己隔離が要請され、アラスカ大学関係者も特別な許可者以外は自宅勤務となった。アラスカにおける陸域フィールドワークは、例年であれば雪解け前後から活発化し、積雪から開放される夏季に多くの現地調査活動が実施されるが、2020シーズンはすべての現地調査がCOVID19の影響を受けた。飛行機でしかアクセスできないアラスカの地域コミュニティーの医療体制はパンデミックに対して特に脆弱であるため、外部との人的交流に強い制限を設けており、研究者コミュニティーは2020年シーズンの現地調査を実施することができなかった。また、国際空港を持つフェアバンクスやアンカレッジから道路アクセスが可能な調査地へのアクセスについても、米国内の主な研究支援機構(NSFやDOEなど)から関連した現地調査実施に対する制限を受けるか、許可されても2週間以上の隔離時間が必要なために、国内外からアラスカ州に訪れて現地調査を実施する研究者はほとんどいなかった。このような状況の下、発表者はフェアバンクス近郊の調査サイトへはアクセスできたため、直接訪問できない日本の研究グループの現地調査活動をサポートした。一方、シベリアで予定していた現地調査には参加することができなくなったため、現地の協力者にフィールド調査の一部を委託することでCOVID19による研究への影響を最低限に留める努力を行った。こうした経験と各方面でのCOVID19対応の比較を通じて、現地調査に寄るところの多い雪氷学におけるニューノーマルへの移行を考察する。