日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC26] アイスコアと古環境モデリング

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.04

コンビーナ:竹内 望(千葉大学)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、植村 立(名古屋大学 環境学研究科)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)

17:15 〜 18:30

[ACC26-P07] 紫外線照射処理による雪氷融解試料中の微生物不活性化の検討

*中澤 文男1,2、東 久美子1,2 (1.国立極地研究所、2.総合研究大学院大学)

キーワード:生物粒子、氷河、雪、滅菌、培養

南極やグリーンランドの氷床コアを用いた気候・環境変動研究において,主に鉱物粒子で構成される風送ダスト(固体微粒子)は,陸域環境変動のプロキシーとして分析が行われている.国立極地研究所における雪氷融解試料中の微粒子濃度測定では,ガラス製バイアル瓶に入れて冷蔵保存している.しかしながら、試料によっては1~2週間後に微生物の増殖に伴う微粒子数の増加が起きるため、長期間の冷蔵保存を困難にしていた.そこで本研究では、試料を紫外線(UV)殺菌処理することで微粒子数の増加を防止できるか検討した.
 本研究では,東シベリア・スンタルハヤタ山域にあるNo. 31 氷河で採取した,表面積雪試料を実験に使用した.雪融解試料はUV 殺菌済みと無殺菌のものを用意し,各試料中の微粒子濃度の時間変化を調べた.微粒子濃度はコールターカウンター(Multisizer 4, Beckman Coulter Inc., USA)をもちいて測定した.
 無殺菌の試料はでは時間の経過と共に微粒子濃度の増加が見られたが,殺菌済み試料は実験開始から53日後においても濃度変化を示さなかった.また,殺菌済み試料中の微粒子濃度は殺菌前の濃度と変わらなかった.このことから,UV 殺菌処理が雪氷融解試料の長期冷蔵保存に有効であると判断された.測定された微粒子の粒径分布から,実験開始後7~14日後に,サイズ約0.7~1.2 μmの粒子が増加し始めたことが分かった.更に生物粒子計数器(XL-10BT2 and XL-28A1; RION Co. Ltd., Japan)の測定から,それらは微生物であることも確認された.14日目以降は,より小さな粒子が増加する傾向にあった.このことは,試料水中の微生物が分解していることを示唆した.すなわち,無殺菌試料中の微粒子粒径分布の時間変化は,微生物の増殖と分解を反映していると考えられた.