11:30 〜 11:45
[ACG34-10] ウランバートル近郊および郊外の牧草地における炭素吸収量の計測と比較評価
キーワード:炭素吸収、草原域、モンゴル
本研究は、日本の温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)シリーズの精度検証の一環として、ウランバートルを中心とする都市域と広大な草原域を有するモンゴルを対象に、温室効果ガスの吸排出量の計測と評価を目的としている。そのため、2015年からウランバートル近郊(Nalaikh、47°41′36.93"N、107°29′21.63"E)及び都市の影響が少ない牧草地(Hustai、47°35′38.87"N、E105°51′23.18"E)において、それぞれ渦相関法による温室効果ガスCO2のフラックス、即ち、生態系純交換量(NEE)のモニタリングを実施してきた。計測データの精度保障のため、計測システムの維持保守および標準ガスを用いたCO2アナライザのキャリブレーションを定期的実施し、観測データの精度検証を行った。
これまで観測された気象データ(2016-2019)によると、両サイトでの日平均風速は約1~10m/sの範囲にあるが、年平均値はそれぞれ2.4m/sと2.8m/sで、Nalaikhがやや強い。一方、気温の変動範囲は‐30℃~30℃であり、年変動幅は60℃以上であるが、年平均値を見るとそれぞれ2.0℃と-1.6℃であり、Nalaikhが寒い。年降水量について、Nalaikhでは165.7mmに対して、Hustaiでは193.6mmである。一方、両サイトで測定された熱収支を見ると、正味放射量(Rn)は-50~200 W/m2の範囲に推移しており、年平均値を見ると、Hustaiでは59.6 W/m2、Nalaikhでは60.6 W/m2、ほとんど同じである。そのうち、地中伝導熱は-30~30 W/m2の範囲に推移しており、年平均値はそれぞれ0.8 W/m2と1.9 W/m2である。顕熱の年平均値はそれぞれ28.1 W/m2、28.2 W/m2で、ほぼ同じであるが、潜熱はそれぞれ20.3 W/m2と25.6 W/m2であり、Nalaikhが僅かに大きい。
最後に、両サイトで測定された生態系純交換量(NEE)を米国のLI-COR社と渦相関研究コミュニティと共同で開発されたEddyPro® 7とTovi™を用いて解析を行った。これらのツールは、生態系による炭素の吸収量と(GPP)と呼吸量(Reco)および純吸収量(NEP=GPP-Reco)を解析するための専用ツールである。解析した結果を図1で示す。さらに集計すると、まず、草原の成長期間だけに限定すると、HustaiとNalaikhの炭素吸収量はそれぞれ527.2 gC/m2/y、599.2 gC/m2/yであり、排出量はそれぞれ457.2 gC/m2/y、446.2 gC/m2/yであり、そして、年間純吸収量はそれぞれ87.4 gC/m2/y、152.5 gC/m2/yである。つまり、両サイト共に吸収源となっており、しかもNalaikhはHustaiの約1.7倍になっていることが分かった。一方、成長期と非成長期と合わせて統計すると、HustaiとNalaikhの年間の炭素吸収量はそれぞれ686.0 gC/m2/y、654.9 gC/m2/yであり、排出量はそれぞれ700.1 gC/m2/y、611.8 gC/m2/yであり、そして、両サイトの年間純吸収量はそれぞれ-45.2 gC/m2/y、74.3 gC/m2/yである。つまり、年間を通してみると、Nalaikhは炭素吸収源となっているが、Hustaiは排出源となっていることが分かった。ここで、非成長期の大きな不確実性は、凍結による設備のエラーだけでなく、都市や近隣住民からの炭素排出の影響を受ける可能性があると考えられる。
これまで観測された気象データ(2016-2019)によると、両サイトでの日平均風速は約1~10m/sの範囲にあるが、年平均値はそれぞれ2.4m/sと2.8m/sで、Nalaikhがやや強い。一方、気温の変動範囲は‐30℃~30℃であり、年変動幅は60℃以上であるが、年平均値を見るとそれぞれ2.0℃と-1.6℃であり、Nalaikhが寒い。年降水量について、Nalaikhでは165.7mmに対して、Hustaiでは193.6mmである。一方、両サイトで測定された熱収支を見ると、正味放射量(Rn)は-50~200 W/m2の範囲に推移しており、年平均値を見ると、Hustaiでは59.6 W/m2、Nalaikhでは60.6 W/m2、ほとんど同じである。そのうち、地中伝導熱は-30~30 W/m2の範囲に推移しており、年平均値はそれぞれ0.8 W/m2と1.9 W/m2である。顕熱の年平均値はそれぞれ28.1 W/m2、28.2 W/m2で、ほぼ同じであるが、潜熱はそれぞれ20.3 W/m2と25.6 W/m2であり、Nalaikhが僅かに大きい。
最後に、両サイトで測定された生態系純交換量(NEE)を米国のLI-COR社と渦相関研究コミュニティと共同で開発されたEddyPro® 7とTovi™を用いて解析を行った。これらのツールは、生態系による炭素の吸収量と(GPP)と呼吸量(Reco)および純吸収量(NEP=GPP-Reco)を解析するための専用ツールである。解析した結果を図1で示す。さらに集計すると、まず、草原の成長期間だけに限定すると、HustaiとNalaikhの炭素吸収量はそれぞれ527.2 gC/m2/y、599.2 gC/m2/yであり、排出量はそれぞれ457.2 gC/m2/y、446.2 gC/m2/yであり、そして、年間純吸収量はそれぞれ87.4 gC/m2/y、152.5 gC/m2/yである。つまり、両サイト共に吸収源となっており、しかもNalaikhはHustaiの約1.7倍になっていることが分かった。一方、成長期と非成長期と合わせて統計すると、HustaiとNalaikhの年間の炭素吸収量はそれぞれ686.0 gC/m2/y、654.9 gC/m2/yであり、排出量はそれぞれ700.1 gC/m2/y、611.8 gC/m2/yであり、そして、両サイトの年間純吸収量はそれぞれ-45.2 gC/m2/y、74.3 gC/m2/yである。つまり、年間を通してみると、Nalaikhは炭素吸収源となっているが、Hustaiは排出源となっていることが分かった。ここで、非成長期の大きな不確実性は、凍結による設備のエラーだけでなく、都市や近隣住民からの炭素排出の影響を受ける可能性があると考えられる。