日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36] 衛星による地球環境観測

2021年6月3日(木) 13:45 〜 15:15 Ch.08 (Zoom会場08)

コンビーナ:沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、松永 恒雄(国立環境研究所地球環境研究センター/衛星観測センター)、座長:岡本 幸三(気象研究所)、三好 建正(理化学研究所)

15:00 〜 15:15

[ACG36-18] ひまわり後継衛星に向けたサウンダのインパクト調査(続報)

*岡本 幸三1、大和田 浩美2、藤田 匡1、林 昌宏1、別所 康太郎2 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:衛星データ同化、ひまわり後継計画、ハイパースペクトル赤外サウンダ、観測システムシミュレーション実験 (OSSE)

静止気象衛星ひまわり8・9号に続く後継衛星への搭載を検討しているハイパースペクトル赤外サウンダ(GeoHSS)について、数値予報へのインパクトを調査した。GeoHSSの観測データは欧州中期予報センターの再解析(ERA5)を用いて疑似的に作成し、これを全球および領域メソデータ同化システムを用いて同化した。さらに、メソ同化の高度化やナウキャストでの利用可能性を調査するため、GeoHSS疑似観測輝度温度データから気温・水蒸気鉛直プロファイルを算出する一次元変分法(1DVar)手法を開発した。

 全球同化では気温・水蒸気への感度が強い61チャンネルを選び、晴天輝度温度を毎時間同化した。2018年の8月の台風や平成30年7月豪雨に対してGeoHSSの影響を評価し、気温や風、水蒸気などの大規模スケールの予測や台風の中心位置の予測が改善すること、観測頻度を1時間から3時間に落としても、小さくはなるものの改善が依然として得られることを確認した。領域同化システムでは、ERA5の気温・水蒸気プロファイルを間引いて同化した。平成29年九州北部豪雨、平成30年7月豪雨などで実験を行い、海上からの水蒸気移流および大きなスケール豪雨の予測が改善することを確認した。一方、線状降水帯の予測改善はGeoHSS疑似観測の同化のみでは得られなかった。新たに令和2年西日本豪雨に対しても同様の実験を実施したところ、これまでの実験と同様に、環境場や大きなスケールの豪雨は改善した。ただし熊本付近の線状降水帯の予測の改善は見られず、同化システムやモデルの高度化と合わせた研究・開発が必要である。

 1DVarでは、GeoHSS疑似観測輝度温度データに対して、全球同化と同じチャンネルを選択し、晴天輝度温度から気温・水蒸気プロファイルを算出した。ERA5に対する検証では第一推定値からの改善や、荷重関数やAveraging Kernelの分布から推定された観測情報量との整合性を確認した。今後は、このプロファイルをメソ同化システムに同化し、従来の結果との比較を行うことを計画している。さらに、より多くのチャネルを用いた1DVarや、輝度温度の同化も検討している。