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[ACG37-P03] 連続観測から明らかになったハンノキ樹幹からのメタン放出の季節変化と制御要因
キーワード:幹からのメタン放出、ハンノキ、閉鎖型チャンバー
近年、樹木を介したメタン放出が、森林土壌でのメタン吸収を相殺する可能性が指摘されている。しかし、樹木を介したメタン放出は、放出量や変動メカニズムが明らかになっておらず、森林生態系において不確かなメタン放出経路となっている。我々は、温帯林の湿地に生育するハンノキ3個体を対象として、幹のみを囲むチャンバーを取り付け、幹からのメタン放出を通年連続観測した。さらに、およそ2週間に一度の頻度で各個体付近の2深度で地下水中の溶存メタン濃度の測定を行った。また、チャンバー上方にグラニエ法センサーを挿入し、各個体の樹液流速を連続観測した。
幹からのメタン放出量は、夏に最大となり、冬に最小となる季節変化を示し、幹メタン放出量と地下水の溶存メタン濃度の間に高い正の相関がみられた。そのため、土壌中で生成されたメタンが樹体内を輸送され、大気へと放出されると考えらえた。樹体内のメタン輸送経路は、樹体内の空隙を介した分子拡散と樹液流に溶存して輸送される経路が考えられる。本研究では、樹液流速が低下する落葉期に幹メタン放出が観測されたことから、分子拡散によってメタンが輸送されると考えられた。一方で、幹メタン放出は日変化を示したことから、一部は樹液流によるメタン輸送が示唆された。また、降雨によって幹メタン放出が増加する様子が観測された。降雨による地下水の流れの変化が、ハンノキ根圏でのメタン濃度の上昇をもたらすことによって、幹メタン放出が増加する可能性が考えられた。我々の観測によって、地温、地下水の流れといった土壌環境の変化が、地下水の溶存メタン濃度の変化をもたらし、幹メタンフラックスも変化することが明らかになった。こうした樹木からのメタン放出の変動メカニズムの理解は、気候変化に対する森林のメタン動態の応答をよりよく理解することにつながると考える。
幹からのメタン放出量は、夏に最大となり、冬に最小となる季節変化を示し、幹メタン放出量と地下水の溶存メタン濃度の間に高い正の相関がみられた。そのため、土壌中で生成されたメタンが樹体内を輸送され、大気へと放出されると考えらえた。樹体内のメタン輸送経路は、樹体内の空隙を介した分子拡散と樹液流に溶存して輸送される経路が考えられる。本研究では、樹液流速が低下する落葉期に幹メタン放出が観測されたことから、分子拡散によってメタンが輸送されると考えられた。一方で、幹メタン放出は日変化を示したことから、一部は樹液流によるメタン輸送が示唆された。また、降雨によって幹メタン放出が増加する様子が観測された。降雨による地下水の流れの変化が、ハンノキ根圏でのメタン濃度の上昇をもたらすことによって、幹メタン放出が増加する可能性が考えられた。我々の観測によって、地温、地下水の流れといった土壌環境の変化が、地下水の溶存メタン濃度の変化をもたらし、幹メタンフラックスも変化することが明らかになった。こうした樹木からのメタン放出の変動メカニズムの理解は、気候変化に対する森林のメタン動態の応答をよりよく理解することにつながると考える。