17:15 〜 18:30
[ACG37-P05] GCOM-C/SGLIから得られる2つの植生指標: NDVI及びPRIの精度検証
キーワード:リモートセンシング、森林、GCOM-C/SGLI、NDVI、PRI
森林は陸域生態系において非常に重要な役割を果たしており,陸域生態系内の物質循環に大きな影響を及ぼす.そのため,森林の状態を正確に把握することは陸域生態系を考える上で基本かつ不可欠である.広大な面積を持つ森林の状態を正確に把握するためには,局所的な観測だけでは不十分なことが多く,広域を一度に観測可能な手法が望まれる.このような手法の例として,人工衛星を用いたリモートセンシングがある.
衛星リモートセンシングには様々な地球観測衛星が使用されるが,その中に近年JAXA (Japan Aerospace Exploration Agency) が打ち上げたGCOM-C (Global Change Observation Mission-Climate) がある.GCOM-CはSGLI (Second-generation Global Imager) と呼ばれるセンサを搭載している.このセンサは他の地球観測衛星に搭載されたセンサと比べて,より多くの波長帯で観測可能,つまり波長分解能が高いという特徴がある.加えて,GCOM-C/SGLIは観測範囲が広いため,観測頻度が高い,つまり時間分解能が高いという特徴もある.ゆえに,GCOM-C/SGLIを用いることで森林の状態をより詳細かつ高頻度に観測できることが期待される.
通常,森林など植生の状態を把握するためには衛星が取得したデータから各種の指標を計算・利用する.GCOM-C/SGLIのデータからは複数の指標を計算可能であるが,特徴的なものとしてNDVI (Normalized Difference Vegetation Index) とPRI (Photochemical Reflectance Index) が挙げられる.
NDVIは植生の活性具合を表しており,赤色域の反射率と近赤外域の反射率から計算される.NDVIは植生を対象としたリモートセンシングなどで広く使用されており,多くの地球観測衛星から算出可能である.しかしながら,GCOM-C/SGLIから導出されるNDVIには,複数のNDVIを計算可能という特徴がある.通常の地球観測衛星には赤色域と近赤外域それぞれに1つずつ観測波長帯があるため,1通りのNDVIのみ算出可能であるが,GCOM-C/SGLIにはそれぞれ2つの観測波長帯があるため,赤色域2通り×近赤外域2通り=4通りのNDVIが算出可能である.これはGCOM-C/SGLIの大きな特徴であり,これら4通りのNDVIを使用することでより細かい森林のリモートセンシングが可能になると思われる.
PRIは葉緑体内に含まれるキサントフィルの化学的変化 (キサントフィルサイクル) を反映する指標である.キサントフィルは光合成における余剰エネルギーの熱散逸に深く関係しており,キサントフィルサイクルを定量的に評価し,他の植生指標と組み合わせることで,森林の総一次生産量を推定できると考えられている.そのためキサントフィルサイクルを反映するPRIは森林のリモートセンシングにおいて重要な指標の一つである.しかしながら,PRIは531 nmと570 nmという非常に近い波長の反射率から計算されるため,高い波長分解能が要求される.そして,これらの波長を独立に観測可能な人工衛星はGCOM-C/SGLIのみであるため,PRIを観測できることはGCOM-C/SGLIの大きな強みである.
以上のようにGCOM-C/SGLIのデータからはNDVI (4種類) とPRIという非常に重要な植生指標を計算できるにもかかわらず,その詳細な精度検証はあまり行われていない.そこで本研究では,GCOM-C/SGLIによる観測データから計算可能である2つの植生指標: NDVIとPRIに注目し,その精度検証をおこなうことを目的とした.
精度検証には日本国内の複数のサイト (天塩,苫小牧,高山,真瀬,富士吉田,富士北麓) における2018年から2020年の3年間の地上検証データを用いた.これらの地上検証データは各サイトに設置した分光放射計によって取得された.加えて,分光放射計と共に設置している魚眼カメラによって撮影した森林の写真から森林のフェノロジー変化を読み取った.そしてこのフェノロジー変化とそれぞれの指標の変化の関係性を調べた.
地上検証の結果,NDVIとPRIはGCOM-C/SGLIから取得可能であることが示唆された.しかしながら,特にPRIでは地上測定値とのずれが大きくなることが多々あった.またそれぞれの植生指標は森林のフェノロジーの変化とそれぞれ固有の関係があることが分かった.
今後はGCOM-C/SGLIから取得したNDVIとPRIについて,外れ値を検知・除去する方法の開発が必要であると思われる.
衛星リモートセンシングには様々な地球観測衛星が使用されるが,その中に近年JAXA (Japan Aerospace Exploration Agency) が打ち上げたGCOM-C (Global Change Observation Mission-Climate) がある.GCOM-CはSGLI (Second-generation Global Imager) と呼ばれるセンサを搭載している.このセンサは他の地球観測衛星に搭載されたセンサと比べて,より多くの波長帯で観測可能,つまり波長分解能が高いという特徴がある.加えて,GCOM-C/SGLIは観測範囲が広いため,観測頻度が高い,つまり時間分解能が高いという特徴もある.ゆえに,GCOM-C/SGLIを用いることで森林の状態をより詳細かつ高頻度に観測できることが期待される.
通常,森林など植生の状態を把握するためには衛星が取得したデータから各種の指標を計算・利用する.GCOM-C/SGLIのデータからは複数の指標を計算可能であるが,特徴的なものとしてNDVI (Normalized Difference Vegetation Index) とPRI (Photochemical Reflectance Index) が挙げられる.
NDVIは植生の活性具合を表しており,赤色域の反射率と近赤外域の反射率から計算される.NDVIは植生を対象としたリモートセンシングなどで広く使用されており,多くの地球観測衛星から算出可能である.しかしながら,GCOM-C/SGLIから導出されるNDVIには,複数のNDVIを計算可能という特徴がある.通常の地球観測衛星には赤色域と近赤外域それぞれに1つずつ観測波長帯があるため,1通りのNDVIのみ算出可能であるが,GCOM-C/SGLIにはそれぞれ2つの観測波長帯があるため,赤色域2通り×近赤外域2通り=4通りのNDVIが算出可能である.これはGCOM-C/SGLIの大きな特徴であり,これら4通りのNDVIを使用することでより細かい森林のリモートセンシングが可能になると思われる.
PRIは葉緑体内に含まれるキサントフィルの化学的変化 (キサントフィルサイクル) を反映する指標である.キサントフィルは光合成における余剰エネルギーの熱散逸に深く関係しており,キサントフィルサイクルを定量的に評価し,他の植生指標と組み合わせることで,森林の総一次生産量を推定できると考えられている.そのためキサントフィルサイクルを反映するPRIは森林のリモートセンシングにおいて重要な指標の一つである.しかしながら,PRIは531 nmと570 nmという非常に近い波長の反射率から計算されるため,高い波長分解能が要求される.そして,これらの波長を独立に観測可能な人工衛星はGCOM-C/SGLIのみであるため,PRIを観測できることはGCOM-C/SGLIの大きな強みである.
以上のようにGCOM-C/SGLIのデータからはNDVI (4種類) とPRIという非常に重要な植生指標を計算できるにもかかわらず,その詳細な精度検証はあまり行われていない.そこで本研究では,GCOM-C/SGLIによる観測データから計算可能である2つの植生指標: NDVIとPRIに注目し,その精度検証をおこなうことを目的とした.
精度検証には日本国内の複数のサイト (天塩,苫小牧,高山,真瀬,富士吉田,富士北麓) における2018年から2020年の3年間の地上検証データを用いた.これらの地上検証データは各サイトに設置した分光放射計によって取得された.加えて,分光放射計と共に設置している魚眼カメラによって撮影した森林の写真から森林のフェノロジー変化を読み取った.そしてこのフェノロジー変化とそれぞれの指標の変化の関係性を調べた.
地上検証の結果,NDVIとPRIはGCOM-C/SGLIから取得可能であることが示唆された.しかしながら,特にPRIでは地上測定値とのずれが大きくなることが多々あった.またそれぞれの植生指標は森林のフェノロジーの変化とそれぞれ固有の関係があることが分かった.
今後はGCOM-C/SGLIから取得したNDVIとPRIについて,外れ値を検知・除去する方法の開発が必要であると思われる.