日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37] 陸域生態系の物質循環

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:加藤 知道(北海道大学農学研究院)、市井 和仁(千葉大学)、伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)、寺本 宗正(鳥取大学乾燥地研究センター)

17:15 〜 18:30

[ACG37-P07] 地球システムモデルMIROC-ES2Lで推計されたGPPの再現性に関する考察

*栗栖 朗1、野沢 徹2、阿部 学3、羽島 知洋3 (1.岡山大学 理学部、2.岡山大学大学院 自然科学研究科、3.海洋研究開発機構)


キーワード:地球システムモデル、総一次生産量

陸域および海洋生態系の物質循環を含む地球システムモデル(ESM)を用いた、地球温暖化予測シミュレーションが一般的になりつつある。しかし、ESMにおける物質循環過程の再現性は必ずしも十分ではない。例えば、国内で開発されているESMであるMIROC-ES2Lでは、熱帯域における陸域の総一次生産量(GPP)の季節変動が小さいなど、再現性に問題があると指摘されている。本研究では、MIROC-ES2Lにより推計されたアフリカ大陸のGPPに注目し、モデルと衛星観測で推計されたGPPの誤差(バイアス)が、どういった物理量のバイアスと関係しているのか調べた。
解析には、MIROC-ES2Lの過去再現実験結果と、衛星観測および地上観測データを使用した。モデルの水平解像度は緯度2.8°×経度2.8°で、観測データはモデルの解像度に変換している。解析対象とした物理量は葉面積指数(LAI)、地表面下向き短波放射、地表面温度、地表面土壌含水率、降水量である。
アフリカにおけるGPPバイアスの緯度−経度分布から、6〜10月には赤道以南、12〜3月には赤道以北でバイアスが大きいことが分かった。GPPバイアスとLAIバイアスの地理分布を比較した結果、6〜10月平均の赤道以南、12〜3月平均の赤道以北では、両バイアスとも同符号、6〜10月平均の赤道以北、12〜3月平均の赤道以南では逆符号になっていた。このことから、GPPバイアスにはLAIバイアスが大きく寄与しているのではないかと考える。その傾向は、特に12〜3月平均で顕著であった。一方、6〜10月平均の熱帯地域(熱帯地域及び葉が生い茂ったサバナ地域)では、LAIバイアスのみでGPPバイアスを説明出来ないことも分かった。同地域では、LAIバイアスの他に何らかの気候変数が関係していると考えられるが、現段階では特定に至っていない。