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[ACG38-P04] 金星大気の新しい衛星観測計画に向けた観測システムシミュレーション実験
キーワード:データ同化、金星大気、観測システムシミュレーション実験
観測システムシミュレーション実験(OSSE)は、データ同化手法を用いて仮想的な観測システムを試験する手法であり、対象とする現象の再現性によって観測計画を評価することができる。地球では、衛星観測をはじめとする新たな観測が導入された際の気象予測能力の客観的評価に積極的に利用されているが (e.g., Masutani et al., 2010)1、惑星衛星観測計画における OSSE の例はほとんどない。惑星衛星観測計画は時間的にも資源的にも限られているため、事前にOSSEを用いてその有効性を調べ、観測機器や観測計画の最適化を図ることは非常に有効であると考えられる。
OSSEを実現するためには、大気現象を再現できる信頼性の高い気象モデルとデータ同化システムの両方が必要である。我々は、地球シミュレータに最適化されたAFES(Atmospheric GCM For the Earth Simulator) をベースとした「AFES-Venus」(Sugimoto et al., 2014a)2及び、Local Ensemble Transform Kalman Filter (LETKF)に基づく金星初のデータ同化システム「ALEDAS-V (AFES LETKF Data Assimilation System for Venus)」(Sugimoto et al., 2017)3を開発してきた。本発表では、この同化システムを用いた4つのOSSEの概要を紹介する(表)。
複数の小型衛星を用いた衛星間電波掩蔽観測計画は、金星の高度約48〜70kmの全球的に覆う厚い雲層にさえぎられることなく、高度約40~90kmの鉛直温度分布を全球的に頻回に観測できることが期待される。本実験では、実際に軌道計算を行って算出した観測点4に対してOSSEを行い、金星特有の大気現象である ①コールドカラーの再現性5,6、②スーパーローテーションの速度の改善性から、軌道の有効性を調査した。
金星探査機「あかつき」の観測では、UVIカメラの雲追跡画像による水平風速、LIRカメラによる温度の水平分布のデータ等の取得が実現し、その観測から様々な現象が発見され理解されつつある。本実験では、あかつきの観測上の制約を取り払い、観測範囲(昼面、夜面、観測緯度帯)、観測頻度等をさまざまに変えてOSSEを行い、金星特有の大気現象である ③4日周期の惑星規模赤道ケルビン波の再現性7、④熱潮汐波の位相の改善性から、観測の有効性を調査した。
[1] Masutani, M., J. S. Woollen, S. J. Lord, G. D. Emmitt, T. J. Kleespies, S. A. Wood, S. Greco, H. Sun, J. Terry, V. Kapoor, R. Treadon, and K. A. Campana (2010), J. Geophys. Res., 115.
[2] Sugimoto, N., M. Takagi, and Y. Matsuda (2014a), J. Geophys. Res. Planets, 119, 1950–1968.
[3] Sugimoto, N., A. Yamazaki, T. Kouyama, H. Kashimura, T. Enomoto, and M. Takagi (2017), Scientific Reports, 7(1), 9321.
[4] Yamamoto, T., S. Ikari, H. Ando, T. Imamura, A. Hosono, M. Abe, Y. Fujisawa, N. Sugimoto, Y. Kawabata, R. Funase, and S. Nakasuka, (2021), Journal of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, submitted.
[5] Sugimoto, N., M. Abe, Y. Kikuchi, A. Hosono, H. Ando, M. Takagi, I. Garate-Lopez, S. Lebonnois, and C. Ao (2019b), Journal of Japan Society of Civil Engineers A2: Applied Mechanics, 75(2), 477–486.
[6] Fujisawa, Y., N. Sugimoto, C. Ao, A. Hosono, H. Ando, M. Takagi, I. Garate-Lopez and S. Lebonnois, in preparation.
[7] Sugimoto, N., Y. Fujisawa, M. Shirasaka, A. Hosono, M. Abe, H. Ando, M. Takagi, M. Yamamoto, (2021), Atmosphere, Vol.12, No.1, 14, 16pp.
OSSEを実現するためには、大気現象を再現できる信頼性の高い気象モデルとデータ同化システムの両方が必要である。我々は、地球シミュレータに最適化されたAFES(Atmospheric GCM For the Earth Simulator) をベースとした「AFES-Venus」(Sugimoto et al., 2014a)2及び、Local Ensemble Transform Kalman Filter (LETKF)に基づく金星初のデータ同化システム「ALEDAS-V (AFES LETKF Data Assimilation System for Venus)」(Sugimoto et al., 2017)3を開発してきた。本発表では、この同化システムを用いた4つのOSSEの概要を紹介する(表)。
複数の小型衛星を用いた衛星間電波掩蔽観測計画は、金星の高度約48〜70kmの全球的に覆う厚い雲層にさえぎられることなく、高度約40~90kmの鉛直温度分布を全球的に頻回に観測できることが期待される。本実験では、実際に軌道計算を行って算出した観測点4に対してOSSEを行い、金星特有の大気現象である ①コールドカラーの再現性5,6、②スーパーローテーションの速度の改善性から、軌道の有効性を調査した。
金星探査機「あかつき」の観測では、UVIカメラの雲追跡画像による水平風速、LIRカメラによる温度の水平分布のデータ等の取得が実現し、その観測から様々な現象が発見され理解されつつある。本実験では、あかつきの観測上の制約を取り払い、観測範囲(昼面、夜面、観測緯度帯)、観測頻度等をさまざまに変えてOSSEを行い、金星特有の大気現象である ③4日周期の惑星規模赤道ケルビン波の再現性7、④熱潮汐波の位相の改善性から、観測の有効性を調査した。
[1] Masutani, M., J. S. Woollen, S. J. Lord, G. D. Emmitt, T. J. Kleespies, S. A. Wood, S. Greco, H. Sun, J. Terry, V. Kapoor, R. Treadon, and K. A. Campana (2010), J. Geophys. Res., 115.
[2] Sugimoto, N., M. Takagi, and Y. Matsuda (2014a), J. Geophys. Res. Planets, 119, 1950–1968.
[3] Sugimoto, N., A. Yamazaki, T. Kouyama, H. Kashimura, T. Enomoto, and M. Takagi (2017), Scientific Reports, 7(1), 9321.
[4] Yamamoto, T., S. Ikari, H. Ando, T. Imamura, A. Hosono, M. Abe, Y. Fujisawa, N. Sugimoto, Y. Kawabata, R. Funase, and S. Nakasuka, (2021), Journal of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, submitted.
[5] Sugimoto, N., M. Abe, Y. Kikuchi, A. Hosono, H. Ando, M. Takagi, I. Garate-Lopez, S. Lebonnois, and C. Ao (2019b), Journal of Japan Society of Civil Engineers A2: Applied Mechanics, 75(2), 477–486.
[6] Fujisawa, Y., N. Sugimoto, C. Ao, A. Hosono, H. Ando, M. Takagi, I. Garate-Lopez and S. Lebonnois, in preparation.
[7] Sugimoto, N., Y. Fujisawa, M. Shirasaka, A. Hosono, M. Abe, H. Ando, M. Takagi, M. Yamamoto, (2021), Atmosphere, Vol.12, No.1, 14, 16pp.