日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 北極域の科学

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.11 (Zoom会場11)

コンビーナ:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(海洋研究開発機構)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、座長:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、Jun Ono(海洋研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)

09:00 〜 09:15

[ACG39-01] 北極温暖化が強化するユーラシアの熱波と東アジアの豪雨

*中村 哲1、佐藤 友徳1 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院)

キーワード:北極温暖化、熱波、豪雨

2020年ユーラシア大陸は冬から夏にかけて持続する前例のない温暖な気候を経験した。特にシベリアでは、6月20日のベルホヤンスクで38.0°Cの猛暑を記録したように、顕著な熱波が観測された。同時期、東アジアでは中国南部と日本西部で豪雨が起こり、広範囲に生じた深刻な洪水が多大な社会的損失をもたらした。

北極圏の急速な温暖化は、地球平均の2倍の速度であり、ユーラシア大陸での熱波の増加に強く関係している。近年の東アジアにおける大雨の大幅な増加についても、このような北極圏の急激な温暖化の影響を考慮する必要がある。

本研究は、ユーラシア大陸の東端で夏季に発生する熱波と豪雨との関係を調べた。その結果、大気内部変動(ブロッキング高気圧)と外部強制(温暖化)に伴う異常の両方が、熱波と豪雨に寄与していることがわかった。現業予報モデルによる1ヶ月アンサンブル予報では、ブロッキングが発達するメンバーほど豪雨の予測精度が高くなる。また北極域のみを2K昇温させた実験では、極東域の高気圧傾向が強まるほど、東アジアの豪雨も強まることが示された。

特に後者は、近年の北極域の昇温傾向をよく表現しており、これらの地域で今後も深刻な災害が増加することを警告している。