日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 北極域の科学

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.11 (Zoom会場11)

コンビーナ:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(海洋研究開発機構)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、座長:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、Jun Ono(海洋研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)

09:15 〜 09:30

[ACG39-02] 北極域の大気上端の短波放射フラックスの季節変動とその長期変動

*安間 碩成1、早坂 忠裕1 (1.東北大学大学院理学研究科)


キーワード:短波放射、海氷、積雪、雲

北極域では、近年海氷面積の減少・積雪面積の減少など気候変動が顕著にみられる。海氷や積雪はアルビードが高く、これらの変動は短波放射に大きな影響を与える。また、短波放射の変動には雲の影響も重要である。そのため、雲、海氷、積雪の影響を定量的に評価する必要がある。
近年の海氷面積の減少に伴って、北極海の大気上端の上向き短波放射が減少している (Hartmann and Ceppi, 2014; Pistone et al., 2014) 。また、この短波放射の変動に対して雲の変動の影響は極めて小さい (Pistone et al., 2014) 。これらの先行研究の多くは年平均や夏に注目して短波放射の長期変動の解析がされている。しかし、北極域の海氷や積雪の季節変動は大きく、季節変動に注目して短波放射の長期変動を評価する必要がある。そこで、本研究は衛星観測データを用いて2001年から2019年までの19年の季節ごと短波放射の長期変動を解析した。
北極全域では大気上端の上向き短波放射の減少トレンドが2001年から2012年までみられ、2012年以降は年々変動が大きく変化した。海域と陸域では変動の特性は異なる。海域では2001年から2007年まで減少トレンドがみられ、2007年以降は年々変動が大きく変化した。この要因として、2007年以降の海氷の変動性の増加が考えられる。海氷域面積は2007年に急激に減少した。その後の2008年3月には、全ての海氷のうち1年氷の占める割合が急激に増加した (Richer-Menge and Druckenmiller, 2020)。これにより、海氷の変動性が強まったと考えられる。また、2007年以降はそれより前の期間と比べて雲の短波放射効果が増加し、短波放射の減少を弱めている。陸域では全域と同様に2012年で変化する。この要因として、2012年以降の積雪面積の年々変動性の増加が考えられる。
陸域と海域では季節変動性が異なる。海氷面積は3月に最大、9月に最小となる。積雪面積は2月に最大、8月に最小となる。また、上向き短波放射は海域で6月、陸域で5月に最大となる。その上、それぞれの月で海氷・積雪・雲特性の変動が異なるため、上向き短波放射の変動の大きな月も年によって異なる。よって、上向き短波放射の長期変動を理解するために、海氷、積雪、雲の季節ごとの変化に注目する必要があると言える。