日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 北極域の科学

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.11 (Zoom会場11)

コンビーナ:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(海洋研究開発機構)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、座長:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、Jun Ono(海洋研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)

09:45 〜 10:00

[ACG39-04] 気候変動下の北極域における最近の火災傾向

*早坂 洋史1 (1.北海道大学北極域研究センター)

キーワード:ホットスポット、気候変動、暖気塊、偏西風、蛇行

最近の研究1-4で、北極域での大規模な火災の気象条件が明らかになってきている。偏西風の蛇行し、高層で高気圧システムが発達すると、南方の暖気塊(Continental Temperate, cTe)が北上し、火災が活発化していた。本報告は、北極域(北緯50度以北の北半球(> 50N、0-180 E&W))での最近の火災活動を分析した。観測衛星上のMODIS (Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)が検出した夏季(JJA)の19年間(2002-2020)のホットスポット(HS)数は約398万個で、北極域を288個のグリッドセル(セルサイズ:2.5N、10E&W)に分割した。各グリッドの年平均火災密度(HSの数103km-2-1)を計算し北極域の活発な火災地域を特定した。

分析結果を基に、活発な火災地域を特定し、気候変動と火災との関連について検討した。図1に、年平均火災密度(HS 103km-2-1)の分布を示した。図1は、中央シベリアからカナダ西部までの北極域の活発な火災地域を示しており、全HS数の84%が検出された。本報告では、北極域の全域と火災活動が特に活発な、重点研究対象地域の3箇所(1.Krasnoyarsk (57.5-65 N、90-120 E), 2.N. Sakha (62.5-70 N、120-150 E), 3.Alaska (62.5-70 N、130-160 W))での火災活動を分析した結果を報告する。

主な解析結果:

1.最大級の火災がクラスノヤルスク地域(図1の1.Krasnoyarsk)で、2019年7月23日に、偏西風の蛇行と高気圧の発達に伴って北上した暖気塊(cTe=290K)の存在下で発生した。

2.北極域(>50 N)での火災(HS)数は、年間平均約21万個で、北緯60度以北の火災は、約半分の約11万個でした。最大の火災年2012年は約37万個に達した。

3.2019と2020年は、北緯60度以北の火災が活発で、年間約20万個と約18万個でした。

4.クラスノヤルスク地域での最大の火災年は2019年で、HS数は約13万個で、平均の約4.3倍でした。

5.北極圏を含むサハ北部の火災は、2019と2020年が顕著で、約6.5万個と約8万個で、年平均の3-4倍でした。

6.サハ北部での19年間の平均火災位置は、北緯65.2度でした。2019年の火災総数は、約6.6万個で、それらの平均火災位置は、北極圏内の北緯67.2度でした。

7.アラスカ(図1の3.Alaska)でのHS数は、2004年に約11万個と2005年に約6万個の大火災が発生した。

8.アラスカの19年間の平均火災位置は、65.3 Nでした。最も高緯度の平均火災位置は、66.4 Nでした。

9.3箇所の重点研究対象地域での活発火災期間の気象条件は、偏西風の蛇行、高気圧システムの形成、暖気塊の南方からの北上であった。最近の研究1-4の結果と同様なものでした。

10.上記の最近の火災活動は、北極域の火災に対する気候変動の影響を示している可能性があり、気候変動の影響の証拠の1つと言える。

参考文献:

1. H. Hayasaka, H. L. Tanaka, P. A. Bieniek, Synoptic-scale fire weather conditions in Alaska, Polar Science, 10-3, 217-226, 2016.

2. H. Hayasaka, K. Yamazaki, and D. Naito, Weather Conditions and Warm Air Masses in Southern Sakha During Active Forest Fire Periods, J. Disaster Res., 14-4, 641-648, 2019.

3. H. Hayasaka, K. Yamazaki, and D. Naito, Weather Conditions and Warm Air Masses during Active Fire-periods in Boreal Forests, Polar Science, 22, 1-8, Article 100472, 2019.
4. H. Hayasaka, G. V. Sokolova , A. Ostroukhov and D. Naito, Classification of Active Fires and Weather Conditions in the Lower Amur River Basin, Remote Sens. 12(19), 3204, 2020.