日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 北極域の科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(海洋研究開発機構)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)

17:15 〜 18:30

[ACG39-P05] シベリア北東部における冬季平均降水量の長期減少傾向に関する要因分析

*村田 茉莉花1,2、野沢 徹1,3 (1.岡山大学、2.理学部、3.自然科学研究科)

キーワード:シベリア北東部、降水減少、水収支式

地球温暖化にともない、北半球高緯度の陸域では20世紀半ば頃から降水量が有意に増加している。一方で、ユーラシア大陸の最東端に位置するシベリア北東部では、逆に降水量が有意に減少している。この傾向は特に12~2月の冬季に顕著であるが、その理由は明らかにされていない。本研究では、客観解析データを用い、シベリア北東部における降水減少について大気中の水収支式に基づき分析した。

解析には、気象庁55年長期再解析データ(JRA-55)を用いた。解析期間は1958~2016年の58年間である。解析に先立ち、JRA-55による降水量変化の再現性を、雨量計による地上観測データ(GPCC)と比較しており、シベリア北東部における冬季降水量の有意な減少が、JRA-55でもGPCCと同様に再現されていることを確認した。鉛直積算した大気中の水収支式における各項の長期変化を考え、可降水量の局所時間微分項の長期変化は小さいとして無視すると、鉛直積算した水蒸気フラックスの発散項と蒸発量、降水量の長期変化がつり合うと近似できる。この3項について、JRA-55を用いてトレンド分布を求めたところ、水蒸気フラックスの発散項の増加と降水量の減少が信頼区間90%で有意な変化を示し、水蒸気フラックスの発散が増加したことで降水量が減少していることがわかった。また、水蒸気フラックスの発散項が有意に増加した理由について、解析期間の最初の10年(1958~1968年)と最後の10年(2006~2016年)における水蒸気フラックスの流出入量を比較したところ、北太平洋からシベリア北東部に向かう水蒸気の流入が減少していることがわかった。講演では、水蒸気フラックスの変化をもたらした要因についても発表する予定である。