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[ACG41-P02] 西表島・崎山湾網取湾自然環境保全地域におけるサンゴの多様性とその差異
キーワード:造礁サンゴ、多様性指数、中間規模攪乱仮説
西表島の崎山湾・網取湾自然環境保全地域は,国内唯一の海域の自然環境保全地域である.この地域は,そこに至る陸路がなく,人為的な影響のない自然環境が保全されており,サンゴやウミショウブ(八重山諸島を分布北限とする海草の一種)などの多様な沿岸海洋生態系を保持している.しかし,崎山湾と網取湾は,隣接する湾であるが,水深,湾長や湾形などの地形的な環境勾配が大きく異なっているため,サンゴ分布の様相は大きく異なっている.
本報告では,これまで我々が実施してきた両湾におけるサンゴ分布調査,波高・土粒子等の物理環境観測とそれら観測データを利用した数値実験の結果(Shimokawa et al., 2014, 下川ほか, 2015, 2016, Shimokawa et al., 2020など)に基づき,多様性指数(MacArthur and MacArthur, 1961, Clark & Warwick, 2001, McCune and Grace, 2002)と中間規模攪乱仮説(Connell, 1978)の観点から,両湾のサンゴの多様性の差異について考察した.
網取湾では,サンゴの多様度(ここでは,群体形状のに基づくもの)は湾央部で最大で,波高と土粒子数を外部攪乱として中間規模攪乱仮説が成立していた.また,ウミショウブは少なく,現在大規模な群落は存在しない.一方,崎山湾では,サンゴの多様度は礁縁で最大で,中間規模攪乱仮説が成立していなかった.また,湾央部から湾奥部にかけてはウミショウブが広く分布している.発表では,両湾における地形的な環境勾配の違いによる土砂流入の影響の違いから,これらの差異の要因についても考察する予定である.
参考文献:
Clarke, K. R. and R. M. Warwick (2001), Changes in marine communities: an approach to statistical analysis and interpretation, 2nd ed., PRIMER-E, Plymouth, pp. 176.
Connell, J. H. (1978), Diversity in Tropical Rain Forests and Coral Reefs, Science, 199, 1302-1310.
MacArthur, R. H. and J. W. MacArthur (1961), On bird species diversity, Ecology, 42, 594-598.
McCune, B. and J. B. Grace. (2002), Analysis of Ecological Communities, MjM Software Design, Oregon, pp.300.
Shimokawa, S., T. Murakami, A. Ukai, H. Kohno, A. Mizutani and K. Nakase (2014): Relationship between coral distributions and physical variables in Amitori Bay, Iriomote Island, Japan, J. Geophys. Res.: Oceans, 119, 8336-8356 (doi: 10.1002/2014JC010307).
下川信也・河野裕美・村上智一・水谷晃・柴山拓実・山本結子・鵜飼亮行・中瀬浩太,2015,西表島網取湾における塊状サンゴの分布と物理環境の関係,土木学会論文集B3(海洋開発),71,969-974.
下川信也・河野裕美・村上智一・宮内星七・鈴木舞弓・水谷晃,2016,西表島崎山湾における造礁サンゴの分布とその物理環境との関係,土木学会論文集B2(海岸工学),72,1435-1440.
Shimokawa, S., T. Murakami and H. Kohno eds. (2020), Geophysical Approach to Marine Coastal Ecology -The Case of Iriomote Island, Japan, Springer, 273 pp.
本報告では,これまで我々が実施してきた両湾におけるサンゴ分布調査,波高・土粒子等の物理環境観測とそれら観測データを利用した数値実験の結果(Shimokawa et al., 2014, 下川ほか, 2015, 2016, Shimokawa et al., 2020など)に基づき,多様性指数(MacArthur and MacArthur, 1961, Clark & Warwick, 2001, McCune and Grace, 2002)と中間規模攪乱仮説(Connell, 1978)の観点から,両湾のサンゴの多様性の差異について考察した.
網取湾では,サンゴの多様度(ここでは,群体形状のに基づくもの)は湾央部で最大で,波高と土粒子数を外部攪乱として中間規模攪乱仮説が成立していた.また,ウミショウブは少なく,現在大規模な群落は存在しない.一方,崎山湾では,サンゴの多様度は礁縁で最大で,中間規模攪乱仮説が成立していなかった.また,湾央部から湾奥部にかけてはウミショウブが広く分布している.発表では,両湾における地形的な環境勾配の違いによる土砂流入の影響の違いから,これらの差異の要因についても考察する予定である.
参考文献:
Clarke, K. R. and R. M. Warwick (2001), Changes in marine communities: an approach to statistical analysis and interpretation, 2nd ed., PRIMER-E, Plymouth, pp. 176.
Connell, J. H. (1978), Diversity in Tropical Rain Forests and Coral Reefs, Science, 199, 1302-1310.
MacArthur, R. H. and J. W. MacArthur (1961), On bird species diversity, Ecology, 42, 594-598.
McCune, B. and J. B. Grace. (2002), Analysis of Ecological Communities, MjM Software Design, Oregon, pp.300.
Shimokawa, S., T. Murakami, A. Ukai, H. Kohno, A. Mizutani and K. Nakase (2014): Relationship between coral distributions and physical variables in Amitori Bay, Iriomote Island, Japan, J. Geophys. Res.: Oceans, 119, 8336-8356 (doi: 10.1002/2014JC010307).
下川信也・河野裕美・村上智一・水谷晃・柴山拓実・山本結子・鵜飼亮行・中瀬浩太,2015,西表島網取湾における塊状サンゴの分布と物理環境の関係,土木学会論文集B3(海洋開発),71,969-974.
下川信也・河野裕美・村上智一・宮内星七・鈴木舞弓・水谷晃,2016,西表島崎山湾における造礁サンゴの分布とその物理環境との関係,土木学会論文集B2(海岸工学),72,1435-1440.
Shimokawa, S., T. Murakami and H. Kohno eds. (2020), Geophysical Approach to Marine Coastal Ecology -The Case of Iriomote Island, Japan, Springer, 273 pp.