日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG41] 沿岸海洋生態系─2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.07

コンビーナ:梅澤 有(東京農工大学)、宮島 利宏(東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野)、渡邉 敦(笹川平和財団 海洋政策研究所)、樋口 富彦(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:30

[ACG41-P06] 沖縄島備瀬崎における海草帯の層序

*佐野 亘1、藤田 和彦2、中野 義勝3、平林 頌子4、横山 祐典5、宮入 陽介5、磯村 尚子6、菅 浩伸1 (1.九州大学、2.琉球大学、3.沖縄科学技術大学院大学、4.立正大学、5.東京大学、6.沖縄高専)


キーワード:海草帯、サンゴ礁、有孔虫、干潟、琉球列島

サンゴ礁の海草帯は、海浜沖の波浪の穏やかな場所に形成される海草の群落であり、魚類や底生生物の生息・産卵の場であると共に沿岸浅海域における炭素循環に大きな役割を担っている場所である(Nellemann et al., 2009;Unsworth et al., 2018)。
 研究対象地である沖縄島備瀬崎の海草分布範囲の底質は砂泥質な堆積物及び、エダコモンサンゴ(Montipora digitata)の群落であった。備瀬崎の海草帯においてはリュウキュウスガモ(Thalasia hemprichii)の地下茎がエダコモンサンゴの地下部の空隙に絡みつき、海草とサンゴが共生関係にあることが指摘されている(二宮ほか, 2016)。また過去の空中写真から、備瀬崎の海草帯は1960年代にそのほとんど消失したが、1980年以降に急激に回復したことがわかっている。
 このように生態学的に固有性の高い場所であり、サンゴ礁ラグーン内の環境変化に敏感に反応すると考えられる海草帯が、完新世におけるサンゴ礁地形形成過程においてどのように発達してきたのかを明らかにすることは、海草帯保全の観点また海草帯を含めたサンゴ礁の生物地形分帯の形成要因を考察する上で非常に重要である。そこで本研究では備瀬崎の海草帯においてハンドボーリングによる掘削調査を行い、5地点で堆積物コア(最大掘削深度 253 cm)を採取した。コア堆積物中に含まれるサンゴ化石及び底生有孔虫化石に注目して海草帯の堆積構造を明らかにした。
 コア堆積物は、上位40 cm(MSL下157 cm)が海草帯を示す砂泥質の堆積物であった。下部86 cm以深は枝サンゴ片(ミドリイシ属;Acropora sp.)からなる粗粒な堆積物であり、40-86 cmは砂泥質堆積物に枝サンゴ片が多く含まれる遷移帯であることがわかった。上記の結果から、枝状ミドリイシの生息環境が砂質堆積物によって埋積され、徐々に現成の海草帯が形成されたことが明らかとなった。